この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
こじらせてません
第2章 馴致
不自然な所作だがやむをえまい。
ソファへアキラを残し、ジリジリと距離を取っていった。
壁に備えられたミラーへ全身を映す。横目で見る。

(かみー!)

溶けていたので、髪がボサついていた。
実験を失敗した科学者ほどではなかったが、幻滅させてしまったのだろうか。

「ちょっとウトウトしてたんだ」訊かれてもいないのに言って、ボサついているのだからかきあげても意味はないので、手櫛で整えながらアキラの隣へ座った。「……アキラくん、帰ってないの?」

話をそらしたく言ったのだが、それにしてもアキラは制服のままだった。渋谷から、ここへ直行したのだろうか。

お母さんは?

「はい……」
「こんな遅くに出歩いて、おうちの人、心配しないの?」

今日、母親を見てしまったから、これまで遅い時間までさんざん部屋へ連れ込んできたのに、いまさらになって問うた。

「はい、……大丈夫です」
「お母さん、とか、心配するでしょ?」

「……それは、大丈夫です」アキラは少し間を置き、「僕が小学校のときに両親が離婚して、父に引き取られたんで……。父からは、あんまり母に会うなって言われてて……」

言いづらそうだ。訊いて欲しくないことを、訊いてしまったのかもしれない。

なるほど。父親の目を盗んで、母親と会っているということだ。

「そっか……。ヘンなこと聞いてごめんね」

ミサはアキラの頭を撫でた。
そんな哀しい事情を知らなかったとはいえ、尾行なんていうマネをしたことが猛省された。

(……ひっ)

きゅうと心臓が締め付けられつつ撫でていると、アキラがその手首を取ってきた。

「え……、どうしたの? ……いっ」

手指がピクンと跳ねた。
アキラが手の甲へキスをしてきたのだ。

(王子……?)

勝手に手を取られたのだが、たしなめる気にはなれなかった。
その1、すなわち挨拶をしている――わけはなかった。

彼は、母親と別れてきたばかりだ。

「アキラくん、おいで」

ミサは懐を開いた。
手の甲から顔を上げたアキラは、ソファへかけなおしてミサへ寄り添うと、額を首筋にくっつけてきた。

少しかぶりを振った。スリスリされている。
とんでもなくかわいい。
/257ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ