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こじらせてません
第2章 馴致
かわいいのだが……、一つの言葉が頭に浮かんだ。

マザコン。

女性の多くがそうであるように、ミサもまた、男がマザコンだと聞くと、不快感を催すほうだった。

『男のほとんどはマザコンである』

よく言われることだ。
ネット検索で「マザコン」と入力したことがあったが、山のように引っかかった。

世の女性は、そんなにもマザコン男に悩まされているのだろうか。ならば、そこかしこで悲鳴が上がってしかるべきだが。

なににせよ、この不快感の源はなんだろうか、と思った。

マザコン男への不快感とやらは、具体的には「自分で決められない。優柔不断だ」、「自立していない」、こんなところだった。

確かに、大人の男が口を尖らせて、「決めてくだちゃい」とか言ってくれば、年齢に比例して、そしてイケメン度に反比例して、イラッとくるだろう。

今、アキラに甘えられている。
少年かつ不世出だから、比例そして反比例している、というのもあるのだが、甘えられることじたいに不快感はない。

「さわっていいよ」

と、許可を下すくらいだった。

(うっく……!)

覚悟はしていたが、おののいた。

アキラが上躯へ手を添えて、さすってきた。
脇腹だ。
というか、バストに近い。近すぎる。

指の通った軌跡に、残波が尾をひく。

「んっ……、どうしたの? 今日……」
「なにが……ですか?」
「なんか、いつもとちがうから」

いつもより、熱情的だ。

マンガの中で、こうやって男がいつもより熱っぽく女を求めてくるときは、今日なんぞや彼にとって「むしゃくしゃする」ことがあった時だ。

女性は鬱憤を解消するための道具ではない。
ただ、ペットだと認定した者には、ペットが鬱憤をかかえているときは、それをなだめてやる責務がある。

だからミサは、背中がくねりそうになるのを耐えていた。

「……ミサさんが、いつもとちがうから」
「ん?」

ギクリとした。
慚愧に溶けていたこと、そして、なぜ溶けていたかということを、勘づかれてしまったのかと危ぶんだ。

「かっこうが……、なんか。そんなかっこしてるの、見たことなくて」
「えっ」ちがった。やはり手を抜きすぎて、幻滅させてしまったか。「……ごめん、ちょっとラフすぎた?」
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