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こじらせてません
第3章 幽閉
(んー……)

不慣れな感情に任せても、いいことはないのかもしれない。

ミサは、今度は軽くだけ息を吸った。

「この部屋を借りているのは私です。私はあなたたちが部屋の中に入ることを許していません。賃貸であっても、プライバシー権は保証されています。私は住居侵入罪であなたたちを訴えることができますし、強制退去を主張することもできます。また、あなたたちが下着姿でいることに、私は著しい不快感を感じています。したがってこれは公然わいせつに相当すると思います」

涙腺という器官は、光の受容体の表面に潤いを与える役目だけに専念してくれればいいのに。
話しながら、ミサはそう願った。

「――というわけですので、服を着て、お帰りになってください」

これで通じなければ、消火器でも撒こうか。

二人はベッドの下に落ちていた上衣を手に取り、しぶしぶ袖を通し始めた。
ミサは腕組みしたまま、ずっとその様子を見守っていた。

「じゃ、帰るね」
「どうもおじゃまさまでした……」

そして、制服のズボンを履き終えたアキラを振り返り、

「じゃ、行こ、アキラ」
「アキラちゃん行きましょう」

と呼びかけた。

「ちがう!!」

今度は無呼吸で放ったのに、ふたたび意外に大きな声が出て、またミサは目を瞠いた。声量と肺活力には因果関係はないのだろうか。

「……私、二人、って言いましたよね? 三人帰ったら、計算が合いません」

「えー、何言ってんの、ミサさん」
「な、なんでわたくしたちだけ……」

ふー、と息を吐いて、普段自分が、いかに省略を多用して話しているかを実感しつつ、

「……ミソラちゃんとトモミさんは、帰ってください。アキラくんは残りなさい。わかりましたか?」

と言うと、ミソラは口を尖らせた。トモミは眉を寄せて小さく首を打ち振るう。

「なにそれー。ミサさん、超ワガママー」
「そうですわ、いくらこの部屋の借り主だからって……」

声量と説得力にも、因果関係はなさそうだった。

「ミソラちゃんと、トモミさんは、このまま帰ってください。そして、アキラくんは、この部屋に残りなさい。みなさん、わかりましたか?」

二人は黙った。

「わかりましたか?」
「……」
「わかってもらえませんか?」
「……」
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