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こじらせてません
第3章 幽閉
一回り年下の彼氏と同じ歳の姉は、アキラと初体験を迎えたがっている。一回り年下の彼氏よりもふた回り年上ということは、自分よりも一回り年上の継母は、アキラに抱かれたがっている。

すぐそばに美しい女が二人もおり、二人とも体を差し出そうとしているのに……なぜ不世出の少年は、この部屋へやってくるのだろう。

「なんで、黙ってたの……?」

「そんなこと、訊かれなかったから」とか、答えてはいけない。
そんな回答を引き出す質問など、考えつくわけがない。

「……ミサさんに、嫌われるからです」

……。
果たして、自分は、アキラを嫌ったのだろうか。

ミサは両手を重ねて自分の胸に押し当てた。
奥の方が痛む。「心痛」というメタファーではない。

「……? ミサさん?」

何だこれは。
頭に浮かぶ擬態語は、「嫌い」という言葉に結びついていかなかった。

「なんで、嫌われたくなかったの?」
「それは……」
「……たぶん、知ってるけど」

ミサは歩を進めて、ベッドの前まで行った。
アキラが見上げる。瞳が赤くなっている。

「私、ミソラちゃんみたいに可憐じゃないし、トモミさんみたいに妖艶じゃない」
「……そんなことないです」
「そんなことあるよ。……アキラくんって、ウソつくの下手すぎる。というか、……せっかく、会社早退してきたのに、こんな目に会うなんて思わなかった」
「ご、ごめんなさい……」

ミサはベッドへ登った。
アキラの前で、同じく正座になる。

「嫌いになった、って言ったら、どうする?」
「……」
「また黙る。……どうするの?」
「……わ、別れます」

ミサは手を伸ばし、アキラの制服のタイを引いた。
顔を間近まで寄せる。

「別れるんだ?」
「え、だって……」

「嫌いになりました、って言われたらっ……」別に目が乾いているわけでもないのに、涙腺が働こうとしてきたから、ミサは奥歯を噛んで休暇を命じた。「……っ、……別れちゃうんだね。そして、若くてかわいらしーくて、女子高生のお姉ちゃんとエッチするの? それから、熟れててなまめかしーい、先生とエッチするんだ?」
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