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こじらせてません
第3章 幽閉
一人暮らしの部屋に四人いたが、二人は退室して、恋人どうしの二人が残されて、抱き合いながら唇を貪っているので、ピチャピチャという音が部屋に立っていた。

(……性欲、強いんだ、私)

少年よ、キスをさせている意味を、よく考えてほしい。

もしキイィッとなった女が、まったく失望しているのならば、そこへ口づけを迫られれば、ひっぱたくものだ。

「……嫌いに、なってない」
「ほ、ほんと……、ですか」

だから、キスをさせている意味を、よく考えてほしい。

「なってない。怒ってるけど」
「か、勝手に……、部屋に入れてご、ごめんなさい。だって、マンションの前で騒ぎになったら……、ミサさんに迷惑が」

キスをさせている意味を、怒っている事実に照らして、よく考えてほしい。

「怒ってるの、そこじゃない」

少年は未熟だった。

「え……?」
「アキラくん、……なんでキスしてるの?」
「そ、それは……」

ミサは両手でアキラの頬を覆い、額を擦りつけた。
じっと見つめる。アキラは目を逸らさない。

アキラがミサに見据えられてすくんでいる、と見せて、ミサもまた、アキラの瞳の中の光から目が逸らせなかった。

知っているが、今は聞きたかった。

「言って」
「ミ、ミサさんが……、好きだから……」
「お姉ちゃんやお継母さんよりも?」
「は、はい、もちろん……あの二人のことは、僕はなんとも……」

ミサは鼻をすすった。もう少し、涙腺は臨時休暇を満喫していてほしい。

「……小娘や熟女なんかより、ヤリたいって思ってくれる?」
「ヤ、ヤリ……」
「思ってくれる?」
「……ち、ちがうよ、ミサさん。僕は、そんなんでミサさんを、好きになったわけじゃ……」
「思ってる?」

瞼を閉じたい。強く閉じたい。
そうやって、幻滅されるかもしれない不安を耐え忍びたい。

だが、アキラの瞳の中にはやはり、幾ばくの侮蔑も見当たらなかった。
だから、視線を避けることができない。

明言してくれるまで。

「……、……思います。でも、それだけじゃ――」
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