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こじらせてません
第3章 幽閉


いったい何度交わっただろう。

ゴミ箱をひっくり返して、結われたコンドームを数えれば、正確な数字が把握できる。だが自分を包む満足度は回数で測れるものではないし、ロマンチシズムは、具体的数値を必要としない。

アキラを正しくしつけるためには、すべての発憤を、この自分が満たしてやる必要があった。

(すごかったな……)

改めて、ミサは男性ではないから、思春期における牡の渇求がいかばかりか、体感したことがなかった。正直、予想以上の熱望だったと言わざるをえない。

(毎日、出さないと、溜まっちゃうよね。こっち体がもつかな)

ペットを飼うって大変だ、と実感した。

一人暮らしの汗蒸した寝室のベッドに二人で寝転び、お互いが放った匂いを吸いこみながら、まんざらでもなくニヤついていても、もう一人はスヤスヤと眠って気づいていないのだから、誰に迷惑をかけるわけでもなく、幸福感にひたることができた。

(ベッドシーツ、買おう。……洗濯がおいつかない)

ミサはスマホを開いた。

アキラは制服と、学校指定のカバンしか持ってきていないのだから、生活をするにあたって必要なものは数多くある。

シーツより優先されるべきだった。
だが、それは彼が起きてから、二人でむつみあいながら選ぶ。
想像しただけで、胸が甘く溶解しそうだった。

(あ……)

見たことがない数の通知バッジが表示されていた。
質問サイトへの投稿に対する、リプライだった。

『長文創作乙w』

『ネタ盛りすぎ。おなかいっぱい』

『おまえ、平日の日中から、こんなことしてないで外に出ろよ。現実の女とちゃんとしゃべるんだぞwww』

だいたい、そんな回答が並んでいた。

中にはもっと言葉を選ばず、ミサの人格を勝手に想像して、勝手な解釈を行い、勝手な侮蔑を下しているものもあった。

もともと、投稿を記述しているときから、このようなリプライは予想していた。特に恋愛についてのカテゴリでは、どんな質問に対しても必ず何件かは侮蔑が返されていたから、なおのことだった。
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