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こじらせてません
第3章 幽閉
普段仕事をしていて気をつけていることなのだが、落ち着いているつもりでも、無意識に寝室へ早く戻ろうとしていたのかもしれない、たやすく守れる形式を怠ってしまった。

構造上の問題を指摘してくれた人も、長文であったからには、それなりに時間をかけさせてしまっただろう。

そのあいだ、こちらは……アキラに耽溺していたのだから、より申し訳ない気持ちになった。

「ミサさん」
「……ひゃあっ!」

アキラに背を向けてスマホをイジっていたから、突然呼びかけられて、叫んでしまった。

ゴロリ、と半回転してアキラを向こうとしたら、後ろから彼がすりよってきていて、できなかった。

(んひっ……)

彼の胸肌に触れた――背中が。

うなじへ鼻息がそよいできて、手が腰骨へ添えられている。

「お、起き……、起きた?」
「はい。すみません……寝てしまいました」
「うん、いいよ、べつに。……お、おはよ」

そんなことよりも、背中だった。

何度か身を返そうとしたが、彼との距離が近すぎて、つかえてしまう。となると、単に身をよじっているのと変わらないから、背中が胸板にこすれた。

(んっ……)

ペットのすぐそばにいながら、弱点を無防備に晒していたとはウカツだった。
甘く痺れていた脚の間が、「疼き」始める。

「ちょ、ちょっと……」

向き直すから離れようか、と言おうとしたら、更に擦り寄ってきた。

「ん……、と、く、くっつきたい、の?」
「はい」
「えと……、このまま?」
「はい。後ろから……、したいです」

この能動的行動は、どう評価すべきだろうか。

一人暮らしの部屋には、自分とアキラしかいないのだから、他の誰に迷惑をかけるわけではない。

自分はというと、彼の息が背後からそよいでくるだけで、いたるところがひくひくと震えてしまう。嫌悪の身震いでは、もちろん、ない。嫌悪ではないということは、もちろん、迷惑でもない。
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