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こじらせてません
第3章 幽閉
育ちの良さが表すように、アキラは良家のご子息のようだ。父親の所得は知らないが、相当あるだろう。

高所得者の子女ほど、こづかいを多くもらっているだろうという仮説を裏付けたかったが、さすがに「親の年収はいくらですか」という、不躾な質問はなかった。

奥ゆかしい団体だった。
しかし、別の調査にて、親に対して聞き取ってくれていた。

なんだか、この団体が好きになった。
少なくとも、安原より好感度が上だ。

二人以上世帯にて、年収300万円以下から、1,200万円以上までを六区分に分け、高校生の子供へのこづかい額が集計されていた。

(むー……?)

年収300万円だろうが、1,200万円だろうが、おおむね、5,500円前後だった。

調査母数の違いはあるが、母数を増やしたところで、年収1,200万円以上の家庭のこづかい額が、一万円や十万円になるとは思えなかった。

つまり、親の年収と、高校生のこづかい額には相関はない、ということになる。

というわけで、アキラに対する妥当なこづかい額に、唸っていた――

「……いえ、お金に困る、ってあまりないです」

……。

「お父さんから、毎月おこづかい、もらってるんだ?」

「いいえ……。なんか、ウチの父、変わってて」アキラは恥ずかしげな、つまりキュンとくる表情を浮かべ、「小学校に上がるときに通帳渡されて。『この金額で卒業までやりなさい。ギャンブルはダメだが、収支報告しさえすれば、投資して増やすのはかまわない。報告を求めるのは、税金の話があるからだ。大損しようがボロ儲けしようが何も言わない。ただし、足らなくなって、増資が必要な場合には、次の運用計画は厳しく審査する』って。中学と高校で、もう一回ずつ入金がありましたけど、ずっとそれでやってます。変、ですよね」

なるほど。
口座にいくらあるのか、と訊きたかったが、訊きかたを間違えると、残高を狙っているのかと誤解される可能性があったのでやめた。

「ううん、金銭感覚つくから、すごくいいことかも。お昼ごはんはどうしてるの?」
「学食があります。電子マネーになってて、使った分、親に請求が行くようになってます。……どうしてですか?」
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