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こじらせてません
第4章 拘繋
「スパークリングワインでいい?」
ミサは首を縦に振った。
「食べれないものあるの? 苦手なものとか」
ミサは首を横に振った。
なんだか理絵子は嬉しそうだった。――自分の思い通りに、事を進めることができているのだから、それはそうだろう。
何もかも、飲まれてはダメだ。
注がれたグラスを掲げる理絵子へ、ミサは毅然と応えてみせた。何を祝福したわけでもない、決意の乾杯だった。
「なんで、アキラくんと私が付き合ってること知ってるの?」
シェフに気をつかっている場合ではない。
いっただきまーす、と、能天気にアミューズを口へ運び始めた理絵子へ、タクシーで為そうとした質問を早速ぶつけなおした。
「ん? チーフ様ったら、隠してたの?」
「べつに。でも、まだ誰にも言ってなかったから」
「隠したほうがいいんじゃない? 相手が相手がだしー」
「そんなの、三宅さんには関係ないから」
「関係あるよー、イロイロと。ていうかさー、婚約者は、どうしたの?」
イロイロって何だ。
罵倒の衝動が湧きそうになったが、こうも続くと胆力が慣れてきたのと、さすがにこんな静かなダイニングで大声を発するのは社会人としてのマナーを問われると思った。
「婚約破棄になったの。アキラくんとつきあい始めたのは、そのあと。だから何の問題もない」
「ふーん。まあ、まっじめーなチーフ様のことだから、浮気とか二股とか絶対しないだろーな、って思ってたけど。……やっぱり、アレ? 現地でオンナ作られちゃった、ってやつ?」
やはり、おそろしい洞察力である。
「そうだけど、ぜんぜん、へいき」
自宅に戻ってから暴れて、泣き叫んだ程度だ。
「そう? いやー、だってさー、それでいきなり高校生とつきあっちゃう? しかもつきあい始めてそんなに経ってないのにさ、プレゼントあげて、銀座とかでおデートして……今や、一緒に住んじゃってるんでしょ? どうしたのチーフ様。ぶっ壊れちゃったの?」
「なんで、そんなことまで知ってるの?」
質問に質問を返してしまった。
理絵子は前菜を箸で整えてから、口へと運んだ。
彼女にキュンとすることはありえないが、箸先の動きを見ていても、まったくの余裕がうかがえた。
ミサは首を縦に振った。
「食べれないものあるの? 苦手なものとか」
ミサは首を横に振った。
なんだか理絵子は嬉しそうだった。――自分の思い通りに、事を進めることができているのだから、それはそうだろう。
何もかも、飲まれてはダメだ。
注がれたグラスを掲げる理絵子へ、ミサは毅然と応えてみせた。何を祝福したわけでもない、決意の乾杯だった。
「なんで、アキラくんと私が付き合ってること知ってるの?」
シェフに気をつかっている場合ではない。
いっただきまーす、と、能天気にアミューズを口へ運び始めた理絵子へ、タクシーで為そうとした質問を早速ぶつけなおした。
「ん? チーフ様ったら、隠してたの?」
「べつに。でも、まだ誰にも言ってなかったから」
「隠したほうがいいんじゃない? 相手が相手がだしー」
「そんなの、三宅さんには関係ないから」
「関係あるよー、イロイロと。ていうかさー、婚約者は、どうしたの?」
イロイロって何だ。
罵倒の衝動が湧きそうになったが、こうも続くと胆力が慣れてきたのと、さすがにこんな静かなダイニングで大声を発するのは社会人としてのマナーを問われると思った。
「婚約破棄になったの。アキラくんとつきあい始めたのは、そのあと。だから何の問題もない」
「ふーん。まあ、まっじめーなチーフ様のことだから、浮気とか二股とか絶対しないだろーな、って思ってたけど。……やっぱり、アレ? 現地でオンナ作られちゃった、ってやつ?」
やはり、おそろしい洞察力である。
「そうだけど、ぜんぜん、へいき」
自宅に戻ってから暴れて、泣き叫んだ程度だ。
「そう? いやー、だってさー、それでいきなり高校生とつきあっちゃう? しかもつきあい始めてそんなに経ってないのにさ、プレゼントあげて、銀座とかでおデートして……今や、一緒に住んじゃってるんでしょ? どうしたのチーフ様。ぶっ壊れちゃったの?」
「なんで、そんなことまで知ってるの?」
質問に質問を返してしまった。
理絵子は前菜を箸で整えてから、口へと運んだ。
彼女にキュンとすることはありえないが、箸先の動きを見ていても、まったくの余裕がうかがえた。