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こじらせてません
第4章 拘繋
「なに? なにが言いたいの」
「誰と……飲みに、行ってたんですか?」
間近から、縋るような目を向けられる。
黒目が憫然と揺らめいている。
ヤキモチというヤツかもしれない。
だがミサは、しまった、という作為の笑みをうかべて、
「オトコのニオイ、バレた? ……私、酔っ払っちゃうと、勢いでフラフラッってなっちゃうことあるからなー。隙だらけになる」
「男の人と、一緒だったんですか?」
「だったらどうする? 私が浮気したら、アキラくんも浮気しやすくなる?」
「……」
これはタチが悪いな、と自分でも思ったが、口が止まらなかった。
まだまだ体重をかけると、アキラがふらついた。
どれくらいの加重まで、耐えてくれるのだろう。
ミサは大きく息をついた。
「――してないよ、浮気なんて。ちゃんと嗅いだ? 男の人のニオイなんかしないでしょ? 三宅さんと、飲みに行ってたの」
「うたがってなんか……、ないです」
「ウソ。私が浮気したんなら、自分もしよー、って思ってたんでしょ?」
「……ミサさん。とりあえず、ベッドにいきましょう」
またまたアキラは質問に答えなかった。
面倒くさがられたのだ。
泥酔していると思われている。
酔っぱらいの取り扱いとしては正しい。だが、彼女の取り扱いとしては正しくはない。
ミサは脱力して、膝をついた。
「……ミサさん、しっかりしてください」
「ベッドに連れてって……、今日もエッチなことするつもりなの?」
「そうじゃなくて……」
「待ってたんでしょ? 先に寝ちゃってればいいのに。エッチしたくって、起きてたんでしょ?」
またアキラは何も答えず、しゃがんでミサを立ち上がらせようとしてきた。
廊下の板目を見つめ、垂れ下がる髪に顔を隠していると、耳元でひとつ、息が聞こえた。
歎息だ。
ミサは力いっぱい彼の肩を突いて、尻もちをつかせた。起き上がろうとする前に、押さえつける。
眉山が力んで、歪んでいるのが自覚された。
「三宅さん、……理絵子と昔から親しいって何で黙ってたの?」
「べ、べつに黙ってたわけじゃない……です」
「きかれなかったから、隠しておこうって?」
「そんなつもり、じゃない……です」
「誰と……飲みに、行ってたんですか?」
間近から、縋るような目を向けられる。
黒目が憫然と揺らめいている。
ヤキモチというヤツかもしれない。
だがミサは、しまった、という作為の笑みをうかべて、
「オトコのニオイ、バレた? ……私、酔っ払っちゃうと、勢いでフラフラッってなっちゃうことあるからなー。隙だらけになる」
「男の人と、一緒だったんですか?」
「だったらどうする? 私が浮気したら、アキラくんも浮気しやすくなる?」
「……」
これはタチが悪いな、と自分でも思ったが、口が止まらなかった。
まだまだ体重をかけると、アキラがふらついた。
どれくらいの加重まで、耐えてくれるのだろう。
ミサは大きく息をついた。
「――してないよ、浮気なんて。ちゃんと嗅いだ? 男の人のニオイなんかしないでしょ? 三宅さんと、飲みに行ってたの」
「うたがってなんか……、ないです」
「ウソ。私が浮気したんなら、自分もしよー、って思ってたんでしょ?」
「……ミサさん。とりあえず、ベッドにいきましょう」
またまたアキラは質問に答えなかった。
面倒くさがられたのだ。
泥酔していると思われている。
酔っぱらいの取り扱いとしては正しい。だが、彼女の取り扱いとしては正しくはない。
ミサは脱力して、膝をついた。
「……ミサさん、しっかりしてください」
「ベッドに連れてって……、今日もエッチなことするつもりなの?」
「そうじゃなくて……」
「待ってたんでしょ? 先に寝ちゃってればいいのに。エッチしたくって、起きてたんでしょ?」
またアキラは何も答えず、しゃがんでミサを立ち上がらせようとしてきた。
廊下の板目を見つめ、垂れ下がる髪に顔を隠していると、耳元でひとつ、息が聞こえた。
歎息だ。
ミサは力いっぱい彼の肩を突いて、尻もちをつかせた。起き上がろうとする前に、押さえつける。
眉山が力んで、歪んでいるのが自覚された。
「三宅さん、……理絵子と昔から親しいって何で黙ってたの?」
「べ、べつに黙ってたわけじゃない……です」
「きかれなかったから、隠しておこうって?」
「そんなつもり、じゃない……です」