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こじらせてません
第4章 拘繋
手が外されて、頬の涙を吸われた。

美の希求心のためのツールが、流れ落ちているかもしれない。つまり、スッピンよりも、憚られる顔をしているかもしれない。

しかしアキラが引き寄せてくれたので、ミサは彼の首に両腕を回して擦りついた。

彼は上裸である。
ミサは服を着ていた。

肌を擦り合わせたかったが、脱ぐタイミングがなかった。脱ぐに脱げない事情もあった。

「……ごめんね」
「飼い主は、ペットにあやまらなくてもいいです」
「飼い主だって、ペットに謝ることもある」

彼はもう風呂に入ったようだ。ボディソープの匂いがする。こちらは、帰ってきたばかりだ。酒くさいだろう。入浴するタイミングもなかった。

「ごめんね、今日できない。頭いたい。お腹もいたい」
「え、大丈夫、ですか?」

今日は、あまりアルコールを摂取してはいけなかったのだ――

「生理になったの。見られたくないから、できない」

ミサは擦り合わせた体の間に片手を差し込み、彼のズボンの中へと及ばせていった。

「……だから、してあげる」

神威をとらえた。
だが、言いがかりとやつあたりのせいか、幹にはまだ気迫が足らなかった。

「んっ、ミサさん、いいよ……そんなのしなくても」

ミサはもう一度かぶりを振って、彼の耳朶へ唇を押し付けた。

涙腺と一緒に、杯細胞も刺激されていた。洟水を垂らしているかもしれないので、顔を見られたくなかったのが理由の一つ。

「だめ、しよう?」もう一つの理由は、恥ずかしかったからだ。「フェ……フェラチオ、してほしいでしょ?」

初めて声に出したばかりか、夜の舞台の中でも、用いたことのない単語だった。

「……」
「また、だまる……のも、慣れてきた。あのね、これからも生理くるの。だから、その……」
「……」
「他のとこで、してあげる」

まだ芯が通っていない幹をゆっくりとしごくと、指の付け根へ凹凸がこすれた。

「いえ、いい、です」
「これからは、口だけじゃなくて、いろんなとこでしてあげる」
「い、いろんな?」
「うん。なんか、脇の下とか、そういうのも、あるんでしょ?」
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