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こじらせてません
第4章 拘繋
すると、んー、と理絵子はグラスを回しつつダウンライトを見つめ、

「……アキラくんてさー、昔から、大人しいんだよね。いかにも弟、ってかんじする」

その言いぶりには、ミサのしらない懐旧がうかがえた。

「あれしちゃいけません、これしちゃいけません、って言ったらさ、よく言うこときくでしょ? あの子。クローズ質問ってやつ? それにはすごく慣れてるかなー。でも、オープン質問は、苦手。黙るでしょ、よく」

理絵子は、クスリと笑って肩をすくめた。

「……」
「ずぼしー」
「何がいいたいの?」
「研修で習ったでしょ? オープン質問のメリット……クローズ質問のデメリット? だいたいそういう男って、押しに弱いもんだよね」
「そんなことない、から」

だが顧みると、理絵子の言う通りだった。

「ま、ミサも本心を出さないタイプだもんね。だから今日のミサは、実は超意外。お酒のチカラ?」

理絵子は顎をあげて流眄を向けた。
善戦者致人而不致於人。そう見せつけられているかのようだった。

(……むう……)

待望の肉が焼きあがって小躍りしている理絵子を見ながら、ミサは喉を潤わせた。
難敵である。

一面的に、ルックスで負けているとは思っていないが、総合力で拮抗しているか、と問われれば、正直、戦力差を認めざるを得なかった。

しかし敗北するわけにはいかない。
あのハゲには執着はなかった。アキラとは違う。
だから名誉ある撤退も、選ぶべくなかった。

「私、入社してからずっと企画開発やってるから」
「どうしたの? 急に。また一段と壊れちゃった?」

最大手がシェアを誇っているからといって、ミサの会社も対抗するすべはあるし、販売戦略として実行してきている。

「アキラくん、脚好きなの」

ミサは足を組んで、理絵子の視線を誘った。

身長に対して、自分自身はわだかまりを抱えているとしても、特定の局面では甚だ有利に働くことは、アキラと付き合ってきて数々判明してきたことだった。

中でも、脚の長さと曲線には自信がある。
アキラが更なる自信を持たせてくれた。
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