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こじらせてません
第4章 拘繋
ミサはこれまで、酒を飲むときは、矜持にしたがって、常に自制してきた。取り乱したことはない。

だが今日は、理絵子との会話を続けると同時に、武器性能係数Eのことばかりを考えていたので、精神的な負荷がかかっていた。それでいつもより酔いが回ってしまったのかもしれない。

「べつに、絡んだわけじゃない。背が高いのは事実だし」
「あれー、認めちゃった。素直にもなるんだね。……私はねー、酔うとエッチになっちゃうの」

ミサもアルコール濃度を薄めるためにお茶をすすって、

「じゃ、これから誰か呼んだら? 安原くんとか」

そもそも安原とマンツーするつもりだったのだろう。
相手として度量不足かもしれないが、それで理絵子の野望が逸らせるならば願ったりだ。

「安原クン、誘っちゃってもいいの?」
「なんで私にそんなこときくの。べつに勝手にすればいい」
「えー、かわいそう。安原クンって、ミサのことが好きじゃん」
「いつの話してるの? そんな前の――」
「ううん、今でも、ミサのことずーっと好きだよ。わかるもん」

……まったく認識しておりませんでした。

本当か?
適当なことを言っているのではないのか?

だが、他の誰かならともかく、洞察力の高い理絵子が言うのである。
だからといって、胸懐には何の電荷の変位も発生しなかったが。

「タイプじゃないし、アキラくんがいるから」
「えー、せっかくミサが婚約者と別れたのに、ぜんぜんチャンス与えられたなかったなんて、安原クンますますかわいそう」

かわいそう、と言っておきながら、理絵子は、あはは、と笑った。

「べつに、安原くんのことなんて、これっぽっちも考えたことも――」自慰に使おうとしたことを思い出しつつ、「――なかったとおもう、たぶん」

タイプだから、着想したわけではない。
簡潔に言うなら、たまたまだ。しかも彼は役目を果たせなかった。
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