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こじらせてません
第4章 拘繋
頬裏を傘に擦られた時の感触を思い出しながら、真上から口を半開きにして降ろしていく。

「う、ぐ、でも……、ご、ごめ、……っ! うあっ!!」

尖らせた舌で、小孔へもキスしようとした寸前、傘が大きく膨らんだ。

根元を抑えている指に、噴流が伝わってくる。
アキラは歯をくいしばり、下肢の筋肉を引き締めたが……力尽きたようだ。

自分の名が叫ばれたかと思うと、熱い弾丸が鼻先を撃った。

「わっ……」

その次には、額まで縦貫された。
細かなしぶきも散って、頬や耳までかかってくる。

「えあ……」

ミサは発砲しているさなかの先端へ唇を押し当てた。掣肘しようというのではない。

眩暈のしそうな薫香に陶然となって、幹を握り、脈発を扶助するように下から上へと狭窄させた。締めているつもりの唇の密面から、あふれてくる。息がつまりそうになりながらも頬筋を調整すると、まだまだ出てきた。

「……ンッ」

やおら頭を下げて喉まで神威を含んだ。口内で、びくっ、びくっと、まだ間欠している。

その味わいに、醍醐味という語が頭をよぎり、頬肉を奥歯で軽く噛むようにして、時間をかけて吸い上げていく。

「ふっく……」

音を立てて唇を外し、口の中に残っていた粘液を飲み干した。

最初に浴びたものが、目頭をかすめるようにして、鼻筋をトロトロと流れ落ちてくる。
口端から漏れたものは、首すじを伝って、ブラウスの襟から中へ入ってきていた。

一息つくと、アキラと目があった。
泣きそうな顔になっていた。

「ご、ごめん……ごめんなさい」

無断で宣託を下してしまったことを詫びているのか、顔面へと撒いてしまったことを詫びているのか、どちらを責めてもよいのであるが、ミサはどちらも責めなかった。

なぜならば、いつか上躯に浴びたしぶきを、顔に浴びてしまって、おそろしく体が疼いていたからである。

鼻翼の粘液を指で拭い、穏やかな笑みを浮かべ、

「がまん、しきれなかった?」
「うう……、ご、ごめんなさい」
「ううん、いいよ。ギリギリまで、がんばってくれたんだもんね。知ってるよ」

腰を上げると、正面からアキラの上へとまたがり、頭を撫でた。
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