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こじらせてません
第1章 捕縛
そして、その外見をもってあらゆる場で「中心」でいることに、アイデンティティを感じているようだ。そのアイデンティティが、外見に更に磨きをかけている。なんとなく、ずっと第一グループにいらっしゃったんでしょうね、と憶測する。

とにもかくにも、やたら絡んでくるので得意ではない人物だったが、仕事であれば仕方がなく、エレベーターで受付階まで降り、広報スペースに入った。

会社沿革やブランドごとの歴史に沿った展示、構成成分の効用といった技術的アピール。そういったものが化粧品会社らしく、洗練された意匠でディスプレイされている。

ここにくると、やっぱりこの辺りは理絵子のセンスの良さかな、と得意ではないなりに認めざるをえない。

理絵子の影を見つけ、歩み寄った。
展示を客人に紹介していた理絵子も、こちらに気づいた。客人も、歩み来るミサを見守るために、向けていた背を翻した。

カカッ──

石床に鳴らす靴裏のリズムが狂った。まだ話をするに適切な距離まで近づいていなかったが、ミサは立ち止まった。

なによ、その顔。早く来なさいよ。
理絵子がそんなオーラを開放し、眉を寄せる。

今度は、別に疾しいわけではなかった。
恥ずかしかったのだ。




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