この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
こじらせてません
第1章 捕縛


化粧品業界は、「美への希求心」で支えられている。

そもそも、人間の化粧行動の目的は様々な切り口で研究されており、様々な見解が示されているが、集約をみていない。
ミサ自身は、そう思っている、ということだ。

通っていた女子校では、宗教的人間観に基づいて、「人は身も心も清らかに、美しくあれ」と促されていた。「べし」論だ。

いっぽう、化粧は禁ずる校則があった。「べからず」論である。

一見、まったく矛盾するようだったが、「身も心も清らかに」とは、物質的な意味ではなく、観念的な意味だと捉えることができる。ただそれは、「できるだけ」であり、ミサの腹の底はモヤついていた。

しかし従うことはできた。なにより「べからず」と言っているのだから。

ナチュラルメイクというものが世の中にあることは知っていた。同級生の中にも、さもノーメイクのように見えるメイクをしている子はいた。

だが、先生の目をたばかることができたとしても、校則には違反している。

条文は、「スッピンではないように見せてはならない」ではなく、明確に、「化粧をしてはならない」だからだ。

美への希求心はミサにもあった。したがって化粧をしたくなかったわけではなかった。むしろ、してみたかった。

ただ、見つからなければいい、という考えは、やがて歯止めがきかなくなるから危険だ。そんな陳腐な警告は、明確に教えられるまでもなく、いつのまにやら体得できるものだし、あるいは祖母のことだから、どこかで明確に教えたかもしれない。ともあれ、危機意識を持っていることじたいが重要だった。

大学に合格して、引越しをし、入学式を控えていたとき、ミサは化粧をしようと考えた。

これは危機意識の欠如ではない。卒業しているということは、校則の適用対象外となっている。

大学へ入ると、新たに多くの人々と出会うことになった。入学前のオリエンテーションで周囲を見回すと、女子学生は皆、化粧をしていた。

よって、「人から美しく見られたい」という他者承認欲求と、「自分を美しくしたい」という自己承認欲求の、両方を携えて、ミサは百貨店へと赴いた。

取り揃えるにあたり、多額の費用を要したが、欲求の満足に釣り合うものだった。

ベタ褒めだった。
/257ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ