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こじらせてません
第4章 拘繋

なぜならば、後輩クンには共通点がある。
総じて、イケメンだ。
昼休み、後輩クンが誘ってきて、公園のベンチで横並びで弁当を食べ始めると、もうかなりあやしい。イケメンの表現には、美しい食べ方がつきものだから、常套となるのも無理はない。
かような切片によって、わりと序盤のほうでヒロインは後輩クンに対し、「カッコよく(カワイく)て、人気あるのよね」という、どの立場からやらわからない評価を下している。
誰かから快適さをもたらされれば、その者に対する好感が増す。
誰かから不快さをもたらされれば、その者に対する好感が減る。
信頼蓄積理論(Edwin P.Hollander,1974)によれば、リーダーが発揮する影響力は、フォローワーがその時点で彼に対し、どれだけ信頼の残高を有しているかに最も依存する。
それに似ている。
ヒロインは胸の内に、充分な好感を貯めているのである。
すなわち、「何」を言われるかではない。
「誰」に言われるか、ということなのだ。
男は顔ではない。だが――
「……書けた?」
「はい」
ふと気づくと、アキラがキーボードから手を離していたから声をかけた。
ミサのノートパソコンを使って、アキラは社会学習の事後レポートを書いていたのだった。
「どれどれー……」
画面を覗き込み、スクロールさせる。
レポートといっても、単なる感想とアンケートだ。何か正解があるわけではない。だから、出来ばえも何もあったものではない。
ひとつの質問が目に止まった。
『受け入れ部署の担当の対応はどうでしたか?』
ミサのことである。
よかった、
わるくなかった、
ふつう、
よくなかった、
わるかった。
アキラは、「よかった」を選んでいた。
「この質問って、そういうことを書くとこじゃないよ?」
アキラへの指導は、もっぱら部下たちに占有されてしまって、ミサが手厚く対応したわけではなかった。大半、壁の外から中身を羨んでいただけである。
「そういうこと、ってなんですか?」
「こういうこと」
ミサはアキラの記入を消し、「ふつう」に変えた。
総じて、イケメンだ。
昼休み、後輩クンが誘ってきて、公園のベンチで横並びで弁当を食べ始めると、もうかなりあやしい。イケメンの表現には、美しい食べ方がつきものだから、常套となるのも無理はない。
かような切片によって、わりと序盤のほうでヒロインは後輩クンに対し、「カッコよく(カワイく)て、人気あるのよね」という、どの立場からやらわからない評価を下している。
誰かから快適さをもたらされれば、その者に対する好感が増す。
誰かから不快さをもたらされれば、その者に対する好感が減る。
信頼蓄積理論(Edwin P.Hollander,1974)によれば、リーダーが発揮する影響力は、フォローワーがその時点で彼に対し、どれだけ信頼の残高を有しているかに最も依存する。
それに似ている。
ヒロインは胸の内に、充分な好感を貯めているのである。
すなわち、「何」を言われるかではない。
「誰」に言われるか、ということなのだ。
男は顔ではない。だが――
「……書けた?」
「はい」
ふと気づくと、アキラがキーボードから手を離していたから声をかけた。
ミサのノートパソコンを使って、アキラは社会学習の事後レポートを書いていたのだった。
「どれどれー……」
画面を覗き込み、スクロールさせる。
レポートといっても、単なる感想とアンケートだ。何か正解があるわけではない。だから、出来ばえも何もあったものではない。
ひとつの質問が目に止まった。
『受け入れ部署の担当の対応はどうでしたか?』
ミサのことである。
よかった、
わるくなかった、
ふつう、
よくなかった、
わるかった。
アキラは、「よかった」を選んでいた。
「この質問って、そういうことを書くとこじゃないよ?」
アキラへの指導は、もっぱら部下たちに占有されてしまって、ミサが手厚く対応したわけではなかった。大半、壁の外から中身を羨んでいただけである。
「そういうこと、ってなんですか?」
「こういうこと」
ミサはアキラの記入を消し、「ふつう」に変えた。

