この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
こじらせてません
第4章 拘繋

すこし、間を置いた。
「……じゃ、なんでしたいこと言ってくれないの?」
「……」
「さっきも、指、いれてこなかったし。前に、したい、って言ったくせに、もうしたくなくなっちゃったのかな。あれー、つきあってそんなに経ってないのになー、って思う」
「……」
「はい、だまった。アキラくんなら、何でもさせてあげる、って言ったのに、何も言わないじゃん。アキラくんなら、って言ったんだけど」
よく憶えてるもんだな、と自分でも感心しつつ、そしてそのときの記憶をよみがえらせつつ、語気を荒らげさせていった。
「そう、『なら』って、ちゃんと、言ったんだからっ。ちゃんと、アキラくんに限定しました! それでも、わたしがコレしたい? アレしたい? ってきかなきゃ、いけないのっ!!」
もう一人暮らしではない部屋に二人でいるが、ミサがわめいたのを最後にどちらも言葉を発しなかったので、しばらくは、空気を震わせるのは秒針の進む音だけだった。
「だって」やがて、アキラがポツリと言った――「したいようにしたら、メチャクチャにしてしまいそうだから」
(んー……)
ミサは髪を耳へかけた。
「メチャクチャに?」
「え、あ、はい……」
「具体的には?」
「い、言えないよ」
オープンど真ん中の質問をしてしまって反省されたので、
「ねえ、アキラくんにガマンさせたくないって言ったの、憶えてる?」
と、問い直した。
「……はい」
「なのに、したいようにしたいの、ガマンしてたの? だから、こんなことになっちゃうんだよ」
これは言いがかりではない。
「だから、脅迫されて、他の人としちゃおっかなー、ってなっちゃうんだよ」
やつあたりでもない。
「なんで好きなのってきいても、教えてくれないし」ミサは大きく息を吐いてから、「だからぜんぶ、アキラくんのせい」
すると、不世出な少年が顔を上げ、
「……なんで好きかなんて、考えたことないよ。好きだって感じるんだから」
"Don't Think, Feel!"、と反駁してきた。
月を指さしているようなものだ。指先ばかりにかまけていると、天の煌めきを見失うぞ……。
「……じゃ、なんでしたいこと言ってくれないの?」
「……」
「さっきも、指、いれてこなかったし。前に、したい、って言ったくせに、もうしたくなくなっちゃったのかな。あれー、つきあってそんなに経ってないのになー、って思う」
「……」
「はい、だまった。アキラくんなら、何でもさせてあげる、って言ったのに、何も言わないじゃん。アキラくんなら、って言ったんだけど」
よく憶えてるもんだな、と自分でも感心しつつ、そしてそのときの記憶をよみがえらせつつ、語気を荒らげさせていった。
「そう、『なら』って、ちゃんと、言ったんだからっ。ちゃんと、アキラくんに限定しました! それでも、わたしがコレしたい? アレしたい? ってきかなきゃ、いけないのっ!!」
もう一人暮らしではない部屋に二人でいるが、ミサがわめいたのを最後にどちらも言葉を発しなかったので、しばらくは、空気を震わせるのは秒針の進む音だけだった。
「だって」やがて、アキラがポツリと言った――「したいようにしたら、メチャクチャにしてしまいそうだから」
(んー……)
ミサは髪を耳へかけた。
「メチャクチャに?」
「え、あ、はい……」
「具体的には?」
「い、言えないよ」
オープンど真ん中の質問をしてしまって反省されたので、
「ねえ、アキラくんにガマンさせたくないって言ったの、憶えてる?」
と、問い直した。
「……はい」
「なのに、したいようにしたいの、ガマンしてたの? だから、こんなことになっちゃうんだよ」
これは言いがかりではない。
「だから、脅迫されて、他の人としちゃおっかなー、ってなっちゃうんだよ」
やつあたりでもない。
「なんで好きなのってきいても、教えてくれないし」ミサは大きく息を吐いてから、「だからぜんぶ、アキラくんのせい」
すると、不世出な少年が顔を上げ、
「……なんで好きかなんて、考えたことないよ。好きだって感じるんだから」
"Don't Think, Feel!"、と反駁してきた。
月を指さしているようなものだ。指先ばかりにかまけていると、天の煌めきを見失うぞ……。

