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こじらせてません
第4章 拘繋
すこし、間を置いた。

「……じゃ、なんでしたいこと言ってくれないの?」
「……」
「さっきも、指、いれてこなかったし。前に、したい、って言ったくせに、もうしたくなくなっちゃったのかな。あれー、つきあってそんなに経ってないのになー、って思う」
「……」
「はい、だまった。アキラくんなら、何でもさせてあげる、って言ったのに、何も言わないじゃん。アキラくんなら、って言ったんだけど」

よく憶えてるもんだな、と自分でも感心しつつ、そしてそのときの記憶をよみがえらせつつ、語気を荒らげさせていった。

「そう、『なら』って、ちゃんと、言ったんだからっ。ちゃんと、アキラくんに限定しました! それでも、わたしがコレしたい? アレしたい? ってきかなきゃ、いけないのっ!!」

もう一人暮らしではない部屋に二人でいるが、ミサがわめいたのを最後にどちらも言葉を発しなかったので、しばらくは、空気を震わせるのは秒針の進む音だけだった。

「だって」やがて、アキラがポツリと言った――「したいようにしたら、メチャクチャにしてしまいそうだから」

(んー……)

ミサは髪を耳へかけた。

「メチャクチャに?」
「え、あ、はい……」
「具体的には?」
「い、言えないよ」

オープンど真ん中の質問をしてしまって反省されたので、

「ねえ、アキラくんにガマンさせたくないって言ったの、憶えてる?」

と、問い直した。

「……はい」
「なのに、したいようにしたいの、ガマンしてたの? だから、こんなことになっちゃうんだよ」

これは言いがかりではない。

「だから、脅迫されて、他の人としちゃおっかなー、ってなっちゃうんだよ」

やつあたりでもない。

「なんで好きなのってきいても、教えてくれないし」ミサは大きく息を吐いてから、「だからぜんぶ、アキラくんのせい」

すると、不世出な少年が顔を上げ、

「……なんで好きかなんて、考えたことないよ。好きだって感じるんだから」

"Don't Think, Feel!"、と反駁してきた。

月を指さしているようなものだ。指先ばかりにかまけていると、天の煌めきを見失うぞ……。
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