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こじらせてません
第4章 拘繋


ミサはアキラを指差そうとしたが、できなかった。

(ううっ……)

彼氏の前で膝を開いた、ありていに言えばM字開脚をした格好をしていた。

神威が頭を埋めている。
力強く、上向きの力が加えられている。

床から片手を離して指差せば、いくぶんは下肢がよじれそうで、何かの拍子に抜け出てしまいそうだ。

それはまったく美しくない。
かといって、「美しい抜き方」も心得ていない。

「待って」と言うのではなく、「抜いて」と言うべきだった。気まずさにたえさえすれば、訂正して言い直すことも可能である。

しかし錯愕が錯乱へと変遷し、ミサに物事の順序を誤らせた。

「あ、あの時、か、勝手にアイマスク外して、血、みたの?」
「……いいえ、外してません」
「じゃ、じゃあ、あ、いまやぶれたな、って、わかるもんなの?」
「……いいえ、わかりません」

抜いていないまま話しているため、血潮の弾みが伝えられてくる。

その他の心当たりを思案したが思い浮かばず、これではラチが開かないし、なによりアキラから送り込まれる振動が思索を邪魔立てしてくるものだから、

「じゃ、なんで、知ってるの?」

と単刀直入だが、オープンな質問を為した。

「いれ……はいってギュッとしたとき、ミサさん、いろいろ呟いてたので……」

アキラは静かに言った。

(ううっ……)

記念すべき、忘れがたい日の出来事であったが、記念すべき、忘れがたい瞬間の記憶は曖昧である。

したがって、何をツイートしたかは憶えていない。

「……なんて?」
「いたい、って……」

下腹を襲った痛苦に、アキラの上躯へしがみついた記憶がある。
痛いのをガマンしていたつもりだが、口から漏れていたということだ。

「……ほかには?」
「うれしい、って……」

望ましい結果が得られた欣快に、アキラの上躯へしがみついた記憶がある。
嬉しがるのをガマンしていたつもりだが、口から漏れていたということだ。

実際、はげしく痛かったし、ひどく嬉しかった。
これは事実である。
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