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こじらせてません
第4章 拘繋
「み、三十路直前でリリースされて、……あ、そうだ、ちゃんと仕事してるし、それなりに給料もらってるんで、独身なのは気にしてません、あしからず。勝手に、こじらせてるとか、思わないでね。……ほら、わたしって、ちょっと背が高いけど、スタイルいいでしょ。じ、自分が、び、び、美人だってわかってる。化粧も超やってきたから上手だし、体じゅうの筋肉のこといっつも気をつけてるし、歩き方も座り方も、一挙手一投足、めっちゃ気にしています! だからね、んと……、その気になったら、ちゃんとモテる! ……で、でも……でもさ、でも、こんなにイケてるのに、し、したことないとかっていうのは、その、なんていうか、ちょっとヤバいじゃん。なんかヤバいって思われるのが世間の風潮ってやつじゃんっ! だ、だから、その、なんとかしなきゃなーって思ってたら、お、思ってたら――」

だが、頭の中を垂れ流しにすればするほど、いたたまれなさは増していくのだった。

「お、思ってたら……なんかいきなり超カワイイ高校生が現れたの。アキラくんが悪いのっ。反則だよ、アキラくん、そのまんまなんだもん……ま、まあ、それって、マ、マ、マンガなんだけどね……ううんっ、マンガでもいいじゃんっ! ずっとお気に入りのヤツなんだもん。なんか、わたしと同じ歳くらいの人が、アキラくんみたいな子をペットにしてて、なんていうの? すごく、よさげだったし、キュウリとかハチミツとか使ってて、あ、それってメロンの話じゃなく、……そういうことじゃなく、つまり、こ、興奮したし。でも……、でも……なんか、マンガの中の子は、すっごい手なづけられて、ご主人様はいつも不敵で余裕なのに、なんかわたしがやると、うまく、いかないような気がして……うまく……いかなくて、わ、わたしがスキル不足なのに、アキラくんがいけないんだって思うのも、なんかイヤで……」

我欲にしたがい思うがままに言いががり、やつあたっていたら、涙腺がはたらこうとした。

「マンガだったんですね」

とりあえずうつむいて、両手で顔を覆おうかな、と思った矢先、アキラがそう呟いた。

(ううっ……!)

追い討ちというヤツである。
これを契機として、羞恥は恥辱へとシフトした。
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