この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
こじらせてません
第1章 捕縛
したがって執務中のミサは壁を羨みながら、その内に奉られた御神体を折につけてチラ見していたため、それが生産性を下げる原因となってしまっていた。さらに言えば、壁の隙間から見える彼の笑顔が、より生産性を落としてくる。
これではいけなかった。
生産性が落ちていることではない。
生産性を落とすほどに、彼の存在を気にしていることを、周囲に知られてはならなかった。
理由は、彼女たち以上に、よこしまな思いをアキラへ重ねているので、バレたらとても恥ずかしいからだ。
なので「もっと近くで見たい」という情動を抑えるために、ミサは彼の姿を写真に収めることにした。
ただし彼は壁に囲まれていたから、無許可で撮影を行えば、「盗撮」と捉えられかねなかった。
囲まれているだけで、隠されているわけではないから、無許可の撮影を、すなわち盗撮と断ずるのは飛躍的すぎるとも思われる。
だが、それはあくまでミサの言い分である。
自分に置き換えて考えてみれば、理解がたやすい。
そんなことをされた日には、気味が悪い。
撮影したことを知られなければいい、という考え方は、繰り返すが、危険だ。
化粧をしていることがわからなければ、校則違反ではない。
所持していた者が盗まれたことを知らなければ、盗みではない。
同じだ。
「アキラくん、ちょっといいかな?」
常にルールを破らなかった危機意識が、この時も発動されて、ミサはアキラを呼んだ。
「はい」
「写真撮らせてくれる? 広報から、仕事してる時の様子、撮っておいてって言われてるの」
「はい、わかりました」
もともと言われていなかったが、社会学習が終わったあかつきには、理絵子もレポートを上げる必要があるだろうから具申すると、「あー、そうだね。たしかに。さすがチーフ様」と、気のない依頼をいただいていた。
したがって、ウソではない。
そして彼の快諾を得た。
「やーん、アキラくん、私とも撮ろうよー」
一人の部下が、調子こいて個人スマホを取り出したから、雰囲気が悪くならない程度にたしなめた。業務中である。役職者としてふさわしい注意だったと思う。
これではいけなかった。
生産性が落ちていることではない。
生産性を落とすほどに、彼の存在を気にしていることを、周囲に知られてはならなかった。
理由は、彼女たち以上に、よこしまな思いをアキラへ重ねているので、バレたらとても恥ずかしいからだ。
なので「もっと近くで見たい」という情動を抑えるために、ミサは彼の姿を写真に収めることにした。
ただし彼は壁に囲まれていたから、無許可で撮影を行えば、「盗撮」と捉えられかねなかった。
囲まれているだけで、隠されているわけではないから、無許可の撮影を、すなわち盗撮と断ずるのは飛躍的すぎるとも思われる。
だが、それはあくまでミサの言い分である。
自分に置き換えて考えてみれば、理解がたやすい。
そんなことをされた日には、気味が悪い。
撮影したことを知られなければいい、という考え方は、繰り返すが、危険だ。
化粧をしていることがわからなければ、校則違反ではない。
所持していた者が盗まれたことを知らなければ、盗みではない。
同じだ。
「アキラくん、ちょっといいかな?」
常にルールを破らなかった危機意識が、この時も発動されて、ミサはアキラを呼んだ。
「はい」
「写真撮らせてくれる? 広報から、仕事してる時の様子、撮っておいてって言われてるの」
「はい、わかりました」
もともと言われていなかったが、社会学習が終わったあかつきには、理絵子もレポートを上げる必要があるだろうから具申すると、「あー、そうだね。たしかに。さすがチーフ様」と、気のない依頼をいただいていた。
したがって、ウソではない。
そして彼の快諾を得た。
「やーん、アキラくん、私とも撮ろうよー」
一人の部下が、調子こいて個人スマホを取り出したから、雰囲気が悪くならない程度にたしなめた。業務中である。役職者としてふさわしい注意だったと思う。