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こじらせてません
第1章 捕縛
「ミ、ミサ、さん……?」
「手、離しちゃだめだよ?」
「そっ、そんなっ……!」
「離したら、おしまいにするからね?」

アキラは忠実に従った。

膝に手をかけて脚を開かせる。爪先で脚の内側をなぞりあげていくと、彼の身体が一層跳ねる。

「もおっ、じっとして」
「うっ、ああっ」

声が切なげに蕩けていた。脚の付け根から、身体の中心へ。手のひらを上にして、制服の前窓の縫い目を辿っていく。

「かたくなってるね?」
「あっ、あっ……」
「どおしたの? 手、離しちゃダメだよ。離したらやめちゃうからね」
「ダメ……、ダメだよ」
「ダメ? なにがダメ? ちゃんと、私のほう向いて言いなさい」

アキラは瞼を懸命に開け、ミサを向いた。黒目には驕慢な顔つきをした自分が映っている。

だが、再び瞼が細まり、

「ミサ、さ……、……んあっ!」

(……んあっ!)

……。

芯から、わななく。

スマホを胸にいだき、身を固くして爆ぜる愉楽に抗おうとすると、抗ったぶん、耐えきれなくなった結果弾ける爆風が凄まじい。

「ん……」

少し余韻が収まってようやく、汗ばんだ身を仰向け、虚ろなまなざしで天井を見上げた。

「アキラ、くん……」

声に出して呼びたいから、呟いた──なお、一人暮らしだ。

(わ……)

腰を少し捩っただけで、下着の中が、……一人暮らしだから、いいのであるが、とてもヌメっていた。

マンガのストーリーはもっともっと続くが、導入部だけでこの有り様だ。

ハマりすぎている。

妄りに思念したわけではない。
アキラはミサが監修したとおり、ごく自然に振る舞った。文字通り、安原とは役者が違った。

彼が不在の時に、部下たちが、

「もー、あの子ヤバい。可愛いすぎ。鼻血出そう」
「だよねー、オネーサン、何でもしてあげちゃいそうになるよね」
「私、そんなシュミない思ってたけど、マジで子宮疼くわー」

そんな話をしていた。

下ネタのきらいがあり、たとえ女同士であってもセクハラが懸念されるところだったが、見渡したところ不快感を感じている者はいなかった。その話も「やっぱりアキラは可愛い」という結論で意見の一致をみて終焉したのだから、騒ぎ立てるほどではなかった。
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