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こじらせてません
第1章 捕縛
キスの分類を行っていて、はたと気づいた。
思えば性経験がなかったが、ミサはキスの経験もなかった。
この事実は、ミサに短絡的な焦りをもたらした。
しいて言うならば、何かの拍子で起こりうる、その1であるが、たとえば幼少期に父親に対して親愛を込めた可能性があった。ただし記憶にはない。あっても数には含めたくない。
確実にあるのは、自慰の際に必ず行う、自分の手の甲に対するキスであるが、自愛を意図しているわけではない。背中への仮託だ。数に含めるべきではない。
仕事で西洋人に会ったさいにチークキスをいただいたことがあるが、ならば、その1にチークキスは含めない。外見的な支障はなかったが、ファーストキスの相手として認定することは、受け入れがたい。
そういえば、今となってはもう「この大根」でかまわないだろうが、この前の計画的想像の中で安原とはたらいたキスはどうだろうか。その3を意図して行ったものであるが、たとえば、それをもって安原に「私たち、キスしたよね?」と言ったら、常人扱いされないだろうから、数には含めてはいけない。
かえすがえす顧みても、ミサはキスの経験はなかった。
世の女性のうち、「キスをしたことがない」という人数は、キスの分類その1と2の存在を考慮すると、「性経験がない」より、はるかに少ないのではないかと直感された。
これがいかほどの危機感を持つべきか、定量的に把握したかったが、これまで行ってきた調査では見当たらなかった。
まったく、厚労省の関係機関を恨まずにはいられない。
「セックスをしたことがありますか?」と訊けたならば、「キスをしたことはありますか?」くらい訊けただろうに。
レポートの調査目的をよく読めば、彼らにとってキス経験の有無は意味をなさないことは明白で、ミサの激憤は筋違いだった。
誤謬である憤慨の原因は、潜在している問題として、「セックスは行われたが、キスは行われなかった」という事態が発生する可能性があるからだった。
ミサは何か仕事めいた要件を確認するフリをして、スマホのブラウザを開いた。
典拠に値するものは得られなかったが、「初キスは何歳でしたか」という調査結果は散見された。アキラの前でスマホにかまけているのは好印象であるはずはないので、早々にスマホを置く。
思えば性経験がなかったが、ミサはキスの経験もなかった。
この事実は、ミサに短絡的な焦りをもたらした。
しいて言うならば、何かの拍子で起こりうる、その1であるが、たとえば幼少期に父親に対して親愛を込めた可能性があった。ただし記憶にはない。あっても数には含めたくない。
確実にあるのは、自慰の際に必ず行う、自分の手の甲に対するキスであるが、自愛を意図しているわけではない。背中への仮託だ。数に含めるべきではない。
仕事で西洋人に会ったさいにチークキスをいただいたことがあるが、ならば、その1にチークキスは含めない。外見的な支障はなかったが、ファーストキスの相手として認定することは、受け入れがたい。
そういえば、今となってはもう「この大根」でかまわないだろうが、この前の計画的想像の中で安原とはたらいたキスはどうだろうか。その3を意図して行ったものであるが、たとえば、それをもって安原に「私たち、キスしたよね?」と言ったら、常人扱いされないだろうから、数には含めてはいけない。
かえすがえす顧みても、ミサはキスの経験はなかった。
世の女性のうち、「キスをしたことがない」という人数は、キスの分類その1と2の存在を考慮すると、「性経験がない」より、はるかに少ないのではないかと直感された。
これがいかほどの危機感を持つべきか、定量的に把握したかったが、これまで行ってきた調査では見当たらなかった。
まったく、厚労省の関係機関を恨まずにはいられない。
「セックスをしたことがありますか?」と訊けたならば、「キスをしたことはありますか?」くらい訊けただろうに。
レポートの調査目的をよく読めば、彼らにとってキス経験の有無は意味をなさないことは明白で、ミサの激憤は筋違いだった。
誤謬である憤慨の原因は、潜在している問題として、「セックスは行われたが、キスは行われなかった」という事態が発生する可能性があるからだった。
ミサは何か仕事めいた要件を確認するフリをして、スマホのブラウザを開いた。
典拠に値するものは得られなかったが、「初キスは何歳でしたか」という調査結果は散見された。アキラの前でスマホにかまけているのは好印象であるはずはないので、早々にスマホを置く。