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こじらせてません
第1章 捕縛
おおよその調査結果が、女性においては十代が平均であったため、ミサの焦りは深まっていた。

斜座のアキラが黙ったまま、見つめ、少しそらし、また見つめてきて、見つめる時間が徐々に短かまった果てに、焦りに加えて、初体験どころか初キスであっても冗長とも言える熟慮を要するとは思わず、この調子ではいったいいつになったら性愛が始まるのだろうと気が遠くなりそうだったミサの、スマホを離したばかりの手を握ってきた。

これこそ、重ねるべき熟慮を重ねた成果、と言うべきかもしれなかったが、

(ひっ……)

ファーストコンタクトだった。物理的に、彼の肉体に初めて触れた。

連日の自慰の舞台の中でアキラと接触してきたのであるが、物理的に触れられた時の感覚が、観念でのそれを、はるかに上回った。

さすがのミサも、手、程度であれば、他人に触れたし、触れられたことがある。

だが彼の指先が手の甲に触れてきたとたん、感覚器が背中に直結しているのかと疑うほどの爽感が駆け抜けた。

肩が跳ねた。鼓動が痛い。

腰を浮かせたアキラはテーブルへ身を乗り出し、ミサへ顔を近づけてきた。

少年の体がまとう、未知の香りがかぐわしい。鼻先が触れて、もう一度、肩が跳ねる。優しい吐息が近づいきて、上唇どうしが触れ、遅れて下唇が触れた。

キスをしてくれている彼の顔を見たかったが、目を開いても焦点を結ぶことができない距離であったし、視界を閉ざしたほうが、唇の感触を如実に感じることができた。

しかしながら、初キスを達成したとはいえ、ミサの胸のうちは喝采をあげたい気分ではなかった。

気分を説明できないほど、ただただ心地がよく、微細にはみあわせる唇が、軽くくっついては離れると、より心地よい。キスを続けながら、アキラが片手で髪を梳き、もう一方の手で軽くミサを抱き寄せる。唇の圧が強まる。頭に感じる触感の麗しさは、手の甲の比ではない。

(せ、せなかっ……)

抱き寄せた指先が背中に触れていた。

今にも体がくねりそうになるのでこらえると、唇の接面が唾液に潤ってきて、プツリという感触から濡れ滑る感触へ変わっていった。

彼の袖を握った。そうしなけれは、変化に耐えられなかった。
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