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こじらせてません
第1章 捕縛
痩身の胸板を探ると、途中でアキラの吐息が乱れ、上躯がキュッと引き締まる箇所があった。

「女の人と、こういうこと、したことは?」
「え……」

アキラが身をよじったポイントを小指の先で責めると、動きに合わせて熱い息が放たれ、アンダーシャツの下に尖りが姿を現してきた。

「したことある?」
「……」

彼の身体へ前のめりになっていたミサの肩が掴まれた。前髪に彼の息づかいを感じた。

「……言えないの?」
「あ、あり……、ます」

挙動を止めてしまうほどのショックはなかった。
付き合っている女の子の有無そのものは、さして重要ではない。いたとしても、続行される。

性経験があるかどうかは、分岐点であったから、重要だった。
そして、性経験があるかどうかを聞くためには、カノジョがいるかどうかを、聞く必要があった。

カノジョはおらず、性経験もない。
カノジョはいるが、性経験はない。
カノジョはいるし、性経験もある。

ミサとしては、そのいずれよりも、「カノジョはおらず、性経験はある」ことを最も望ましく思っていた。

カノジョはおらず、性経験もなければ、未経験者だけで事を進めることになるから、失敗リスクは大きくなる。かつ、ミサが未経験であることを、アキラは知らない。

カノジョはいるが、性経験はなければ、これに加えて、個別具体的な女について問い詰める行為が割り込んでくる。自分が練習台ではないことを確定的にしてから、先に進めることになる。

カノジョはいるし、性経験もあるのなら、個別具体的な女について問い詰める行為は同様だが、問い詰める内容が異なってくる。自分が比較対象ではないことを確定的にしてから、先に進めることになる。
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