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こじらせてません
第1章 捕縛
不条理な敗北感に包まれていたミサは制動をやめて彼の体へのしかかった。アキラもまた、重量も力学も意識していなかっただろうが、後ろ手をついてミサが受けるであろう衝撃を緩和してくれた。

つまり、優しい。

(もう……、ダメだ)

「継続できない」という意味では、もちろん、ない。

ミサは仰向けになったアキラを、四つん這いにまたいだ。

彼の顔の横についていた手を片方外すと、上躯を捻り、また髪を耳へとかけた。しかし下方へ俯せているので、かけた途端にはらはらと眼下へと落ちてくる。

「私ね、……フツーにできない」
「……え」

頭をゆすって片側に垂れていた髪を全て逆側へと振り向けた。
髪に仕込んでいたフレグランスが舞い散り、

「それでもいい?」

今回についてはコンテキストが足らず、アキラは意図が理解できていなかった。

しかしミサは、

「いいよね?」

そう言って、アキラの人中を抑えるように、手のひらを置いた。中指で整った鼻先を軽く撫でる。

「あ、あの……?」
「わかった? ……じゃないと、やめる」

彼の鼻息と吐息で指が湿ってくる。

「……わかりました」

指の付け根へ擦れて、そうアキラの唇が動いた。彼を挟んでまたいでいる奥で、新たな雫が熱くにじむ。口元から手を外し、彼の髪へ触れた。やはり、予想していた以上の手触りだった。

「ミ、ミサ、さん……」

アキラが切なげな声を漏らす。

「ん? どおしたの?」

ミサは委細に気づいていない──フリをして、アキラの潤んだ瞳を真上から覗きこんだ。アキラは唇を少し開閉したが、最終的には言いたい言葉を飲み込んだ。

「どおしたのかなー……?」

含み笑いをし、爪先を彼の頬から喉元、胸元まで辿らせていく。

「んっ」

マットレスの上で、彼の体が弾ねた。すでに尖っていた乳首をひっかくと、びくっと震慄している。

「さっき何言いかけたの……?」

はずかしげだ。
はずかしいことを言おうとしたのだろう。だから、声をひそめ、囁いてやった。

「も、もう、ガマン、で、できないよ……」
「だーめ。ちゃんと、言って?」ミサは耳に唇を近づけて、さらに熱っぽく囁く。「何がガマンできない?」
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