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こじらせてません
第1章 捕縛
時間に遅れたので、急いだからではない。

冷たいものを喉に通すことによって、テーブルについた時から早まっている鼓動をおさめたく、少なくとも、外に漏れないようにしたかった。

黒居は伏し目がちに黙った。次に言う言葉を考えているようだ。

喉を潤しても一向に鼓動が落ち着かないので、ちょうど見やすくなった黒居の頭髪へ目を向けた。

本数が減った。厳しい日射しが頭皮を痛めつけるのだろうか。

ここからもっと減ったならば、無理に七三を保とうとはしないで丸刈りにしたほうがいい。そのほうが荒れた大地で現地の人々に囲まれた黒居を見栄えさせる。

客観的に、黒居は淡麗とは言えなかった。夢に邁進している姿を知らなければ、大半の女は無慈悲にも彼の魅力に平均点以下を付けるだろう。

男は顔ではない――大学時代、黒居を紹介され、しばらく会話したのち、彼がトイレで席を外した時に、引き合わせた当の叔母がそう耳打ちした。

確かに、外見に関しては叔母が心配するとおりだった。しかし、日本の最高学府に通っていたのだし、人間性と将来性においては、好評価ができた。

男は顔ではない、と聞いてすぐに、その通りだ、と思えた。

思えないほど、不躾ではなかった。

「それで……」初めて黒居に会った時のことを思い出していたが、長くはもたなかった。沈黙がいたたまれなく、まだたいしてついてもいない、グラスの水滴をおしぼりで拭った。「何を話せばいい?」

すると黒居は決心した息をつき、間隔を広めに、両手をテーブルに置いた。

「本当に、すまない」

額を天板へ押し付けんばかりに頭を下げると、頭頂部がはっきりと見えた。

やっぱり、坊主にしたほうがいい。

進言しようかと思ったが、いまは戸惑うだけだろうからやめておいた。

「……うん」

なので、結果的に何が「うん」なのやらわからない肯諾を返すことになった。

何を話したらよいか尋ねているのに、謝罪から入った黒居もいけない。会話が成立していない。

「君をずっと待たせておいて、こんなことになったのは、本当に、すべて僕が至らなかったせいだ。何の言い訳もできないし、君は何一つ悪いことはない。どんな報いも受けるつもりだ」

間違いを繰り返さず、会話を成立させるために、この発言を分析することにした。
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