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こじらせてません
第1章 捕縛
一つ、すべてとは何か。何と何と何が至らなかったのか。いくつか心当たりがあるので、すべて、という一言で片付けると論点が散る。

二つめ。こちらは何も悪いことがない、と言ってくれたが、その通りだ。正直、そんな風に言われるなんて意外です。当たり前のことを、あえてそう言われると、黒居は内心「相手側にも非があるだろう」と思っているのではないかと勘ぐってしまう。

最後に、どんな報いも受けるつもりなのは本当か。

もちろん常識的に、この場で「ある一定の報いなら受けるつもりだ」などと言えないのは承知している。しかし、揚げ足を取ろうと思えばいくらでも取れてしまう。それで本当に大丈夫なのか。

つまり、黒居の発言は真摯かつ誠実に見せて、反芻すると疑問符が盛りだくさんだった。

おっしゃるとおり、ずっと待っていた。

かしこまった席ではなかったが、叔母の紹介で引き合わされ、交際を始めたのだから、お見合いと同等の場だったと思う。

黒居と結婚するのだと思っていた。それが……。

「私も相応の報いを受けます」

この時初めて、黒居の隣に座っていた女──見た目としては女の子、と言ったほうがしっくりとくる、その人物へと目線を向けた。席についた時点で、初対面である彼女が何者か、よくわかっていた。

「いや、由美子は悪くない。すべて僕が悪いんだ」

黒居が言うと、

「黒居さんにすべて押し付けるなんて、私にはできないよっ」

由美子はもう涙目になっている。

黒居の言葉にはウソがある。
全てを背負うつもりならば、ここに由美子を連れてくるわけがない。

そして、由美子の物言いも引っかかる。

「相応の」ということは、追うべき責任に上限があると思っていて、それが相手方を納得させるに値するかは別問題だということだ。黒居が言うのを聞いて、いや、無意識なのかもしれないが、とにもかくにも、「どんな報いも」を、「相応の報い」という表現に変えたのが傍証だ。

変えなければならない理由は事前に聞いていたし、外観からでもわかった。

「今、何カ月?」
「五か月です」

会話中もずっと下腹に手を添えている。その時期に、そうしていなければならないものなのかどうか、身ごもったことがないからわからなかったし、手をどこに置くかは本人の裁量だから、理由をつまびらかにする意味もない。
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