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こじらせてません
第1章 捕縛
ミサは美味に憑かれて、脚の間へ手を及ばせた。逆手で制服の前窓の縫い目を辿る。

「……かたくなってるね?」
「あっ、あ……」
「どおしたの? 手、離しちゃダメだよ?」
「ダメ……、ダメだよミサ……、さん」
「ダメ? なにがダメ? ちゃんと、私のほう向いて言いなさい」

左右に面を背けていたアキラは、閉じていた瞼を懸命に開け、ミサの方を向いた。

「ミサ、さ……、……んあっ!」

彼の瞳には自分が映っていた。
アキラは気づいているだろうか、いつもよりアイライナーを長めに、目尻をはね上げて引いている。こういったことに男は鈍感だという。そして少年は未熟だ。そのどちらでもあるアキラは、気づいていないのかもしれない。気づいていないから、こうして年上の女に連れ込まれて、またがられているのだろう……。

(スゴい。そのまんま、だ……)

アキラの瞼が再び細まった。

「そんなことしたら……」
「したら?」

真下に横たわるアキラは、毎夜の舞台の通りの言葉を発して、毎夜の舞台から想像していたよりもずっと、愛おしい姿だった。

「んー? ……聞かせて?」

ミサは彼の口元へ耳を寄せ、その死角で、ズボンのファスナーをおろし始めた。

「だ、だって」
「……ちょっ! はっ、くっ……!」

いてもたってもいられなくなった手が、ミサの腰を狂おしく擦ってきた。
普段なんでもないと思っているウエストを擦られただけで、全身がわななく。

(やっ……)

コマの中で描かれていた、「ゾクゾクッ」という効果音のとおりだった。怯んでいるあいだに、両脇から遡ってくる。

(……あ、あ、あ、だめだめだめだめ、ダメダメダメダメ……)

「こ……」ミサは彼の手首を持ち、シーツへと押し付けた。「……こーらっ。勝手に触らないで。じっとしてなさい、って言ったよね?」
「ご、ごめんなさい」

少し声を低くして言うと、アキラは眉間を寄せ、下唇を噛んだ。

……マジで、イクかと思った。
これだけで? しかし危なかった。

(もう……、ダメだ)

継続できない、という意味では、もちろん、なかった。
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