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こじらせてません
第1章 捕縛
度量衡とは、まったくの無機質なものだった。
物質感は恐怖を生むだけだが、存在感は畏怖を感じさせる。
「怖れ」とは、すなわち畏怖だった。
ミサは己の短絡を恐縮する気持ちで、膝立ちのままスカートのウエストを緩めた。長い脚から抜き取り、躊躇なくブラウスのボタンを外していく。その間も、彼の神威から目を離せなかった。
下着姿になる。大人っぽいデザイン。黒と迷ったが、思い切って紫にした。
腹斜筋も臀筋も弛みはない。普段から僧帽筋の存在も忘れずにきたから、ブラも外してしまう。アキラの視界を塞ぐことは既定路線であったが、下着もボディラインも配慮を怠らなかったのは、もちろん自己承認欲求によるものである。長期記憶に書き込まれる、この時を迎えるにふさわしい、自分でありたかった。
「……アキラくん」
上体のほうへにじったミサは、彼の腕をいましめる上着を、丁寧に取り除いた。両手の自由を取り戻したアキラは、途中からは自ら脱いで上裸となった。そのあいだに、太ももに残っていたブリーフを抜いてやる。
「……取っていいですか?」
だが、アキラがアイマスクに手をかけると、
「だめ」
ミサはすぐさま遮った。
自己承認欲求が満たされていたとはいえ、他者承認欲求の成否を確かめるだけの勇気は、まだなかった。
するとアキラは、その手をミサへと向けてきた。鬼さんコチラと発しなくとも、彼の手は彷徨なく二の腕をとらえると、もう一方の手は腰を抱き寄せる。
「わっ、……、……ンンッ!」
不意打ちだった。ずいぶんと甘く呻いてしまった。
「取りたい、……です」
「だめ……」
ごくまれに、マンガの中で、性感極まった主人公が「らめえ」と言うのを見かけた。
凄艶なる性楽に浸るあまり、脳効率が鈍化したものと思われるが、ミサは自慰において、そこまで自分を追い込むことはできなかったから、そんなことが現実にありうるのかしらと思っていた。しかし今しがた自分の耳に届いたのは、フキダシの記述に近しい音韻で、
「ミサ、さん」
「……、……。……らめ」
間を置いてみたが、同じだった。
物質感は恐怖を生むだけだが、存在感は畏怖を感じさせる。
「怖れ」とは、すなわち畏怖だった。
ミサは己の短絡を恐縮する気持ちで、膝立ちのままスカートのウエストを緩めた。長い脚から抜き取り、躊躇なくブラウスのボタンを外していく。その間も、彼の神威から目を離せなかった。
下着姿になる。大人っぽいデザイン。黒と迷ったが、思い切って紫にした。
腹斜筋も臀筋も弛みはない。普段から僧帽筋の存在も忘れずにきたから、ブラも外してしまう。アキラの視界を塞ぐことは既定路線であったが、下着もボディラインも配慮を怠らなかったのは、もちろん自己承認欲求によるものである。長期記憶に書き込まれる、この時を迎えるにふさわしい、自分でありたかった。
「……アキラくん」
上体のほうへにじったミサは、彼の腕をいましめる上着を、丁寧に取り除いた。両手の自由を取り戻したアキラは、途中からは自ら脱いで上裸となった。そのあいだに、太ももに残っていたブリーフを抜いてやる。
「……取っていいですか?」
だが、アキラがアイマスクに手をかけると、
「だめ」
ミサはすぐさま遮った。
自己承認欲求が満たされていたとはいえ、他者承認欲求の成否を確かめるだけの勇気は、まだなかった。
するとアキラは、その手をミサへと向けてきた。鬼さんコチラと発しなくとも、彼の手は彷徨なく二の腕をとらえると、もう一方の手は腰を抱き寄せる。
「わっ、……、……ンンッ!」
不意打ちだった。ずいぶんと甘く呻いてしまった。
「取りたい、……です」
「だめ……」
ごくまれに、マンガの中で、性感極まった主人公が「らめえ」と言うのを見かけた。
凄艶なる性楽に浸るあまり、脳効率が鈍化したものと思われるが、ミサは自慰において、そこまで自分を追い込むことはできなかったから、そんなことが現実にありうるのかしらと思っていた。しかし今しがた自分の耳に届いたのは、フキダシの記述に近しい音韻で、
「ミサ、さん」
「……、……。……らめ」
間を置いてみたが、同じだった。