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こじらせてません
第1章 捕縛
抱きしめる彼の指が背中に触れている上に、引き寄せられ、上躯も密着している。お互い、肌を晒している。なので当然、肌どうしが擦れている。体の起伏を教えているようで恥ずかしいが、他人と肌身を擦り合わせるのが初めてなので、あまり麗しさに脳効率がどんどん落ちていく。

「ギュッとすると……、すごく、気持ちいいです」

舌足らずが恥ずかしいから、何も言わなかった。
まさしくミサも、肌で味わっていた。カラダが溶けそうだ、トロけそうだ、などと言うのは、実世界で漏らしたら冴えない表現だと思っていたが、どうやら身体の話ではなかった。このままでは、脳が融解してしまう。

(すごく、チューしたい。……ついでに、ちょっとだけでもいいから、イキたい)

またキスをねだりたいついでに、そんな微調整ができるのか不明だったが、彼の生裸に密着して、ウズウズだか、キュンキュンだかするあまり、踏破への猛烈な誘惑にかられた。

だが、まさにその時、神威が跳ねて下腹に触れた。血潮が弾み、トン、トンと叩かれ、またしてもミサは目的の何たるかを思い出すことができた。

いまは、そんな場合じゃないですよ──

「れも」小さく咳払いをし、「……でも、だめ。めかくしは外さないで」

決死の思いで、アキラから離れる。

アキラが悲しそうな顔をした。
その表情に胸を傷めつつ、ミサはショーツを引き下ろした。

自己承認欲求にかけて、脳がヤバくなっている顔を見せられない。笑われたり、引かれでもしたら、他者承認欲求がボロボロになる。そしてこれから、おそらく、自分は、別の顔をするのだから……なおさらだった。

「……めかくししてても、つけれる、よね?」

アイマスクと同じく、枕の下に忍ばせていたコンドームの封を切り、アキラへと手渡した。

当然、ネット上に数々見かける「初体験の心得」は、できうるかぎり諳んじていた。

『しっかりと濡れていなければ、スムーズに挿入することができません。無理に挿入しようとすると、痛みが増して、セックスに対する恐怖心につながるおそれがあります』

『カレにたくさん刺激してもらって、充分リラックスさせてもらいましょう』

アキラにたくさん刺激してもらうつもりだったが──下ろしたショーツのクロッチとの間に糸を引いており、足首から抜き取ると布地が重く感じられた。
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