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こじらせてません
第2章 馴致
ごく標準的な両親は、世間一般で持たれている、
『妙齢で一人暮らしの女が、ペットを飼い始めると婚期が遅くなる』
という風説が頭をよぎったにちがいない。
だが、風説はあくまでも、風説だ。
ペットを飼うにあたり、ミサは消費動向を参照していた。
三十四歳以下の単身勤労者世帯で、消費支出に対するペットに関する平均支出額の比率は、男性0.02%に対し、女性0.22%、十倍もの開きがある。
品目は四つ。
それそのものの品目である「ペットフード」。
ペット用衣類等を表す「他の愛玩動物・同用品」。
それそのものの品目である「動物病院代」。
トリミング代等を表す「他の愛玩動物関連サービス」。
これらを、ペットに関する支出、と見なした。
いずれにおいても、男性のそれを、女性が圧倒的に上回っている。
なお、ひとくちにペットと言っても、犬猫のほか、鳥、魚、爬虫類、虫なども含まれる。要は、消費者側がペットと見なし、彼らのために支出した、と認識している消費が計上されている。高級品、高級サービスを与えるか否かは、消費者それぞれの判断に依存してしまうのだが、単純な金額だけを比較したとしても、「男性よりも、女性のほうがペットをよく飼っている」と見てよかった。
だからといって、これが、こと女性において、晩婚化に看過できない要因となっているかというと、そうとは思えなかった。
かの厚労省の関係機関の調査結果においても、二十五歳から三十四歳の女性が答えた、結婚しない理由の第一位は「自由さや気楽さを失いたくない」だ。
ペットを飼えば、癒しを与えてくれる代わりに、自由さや気楽さは失われるだろう。彼らのせいではない。祖母の教えに従えば、それは人間の傲慢というものだ。
そもそも、婚期が遅くなることが良くないことなのか、というと、国にとっては一大事であっても、個人にとってはそうではない。しかし、娘が婚約破棄をしたと知った矢先の親に対し、世間一般にそんな風説があるにもかかわらず、いきなりペットを飼う意向を告げたことは、親子の情愛に照らせば軽率いえば軽率だった。
『妙齢で一人暮らしの女が、ペットを飼い始めると婚期が遅くなる』
という風説が頭をよぎったにちがいない。
だが、風説はあくまでも、風説だ。
ペットを飼うにあたり、ミサは消費動向を参照していた。
三十四歳以下の単身勤労者世帯で、消費支出に対するペットに関する平均支出額の比率は、男性0.02%に対し、女性0.22%、十倍もの開きがある。
品目は四つ。
それそのものの品目である「ペットフード」。
ペット用衣類等を表す「他の愛玩動物・同用品」。
それそのものの品目である「動物病院代」。
トリミング代等を表す「他の愛玩動物関連サービス」。
これらを、ペットに関する支出、と見なした。
いずれにおいても、男性のそれを、女性が圧倒的に上回っている。
なお、ひとくちにペットと言っても、犬猫のほか、鳥、魚、爬虫類、虫なども含まれる。要は、消費者側がペットと見なし、彼らのために支出した、と認識している消費が計上されている。高級品、高級サービスを与えるか否かは、消費者それぞれの判断に依存してしまうのだが、単純な金額だけを比較したとしても、「男性よりも、女性のほうがペットをよく飼っている」と見てよかった。
だからといって、これが、こと女性において、晩婚化に看過できない要因となっているかというと、そうとは思えなかった。
かの厚労省の関係機関の調査結果においても、二十五歳から三十四歳の女性が答えた、結婚しない理由の第一位は「自由さや気楽さを失いたくない」だ。
ペットを飼えば、癒しを与えてくれる代わりに、自由さや気楽さは失われるだろう。彼らのせいではない。祖母の教えに従えば、それは人間の傲慢というものだ。
そもそも、婚期が遅くなることが良くないことなのか、というと、国にとっては一大事であっても、個人にとってはそうではない。しかし、娘が婚約破棄をしたと知った矢先の親に対し、世間一般にそんな風説があるにもかかわらず、いきなりペットを飼う意向を告げたことは、親子の情愛に照らせば軽率いえば軽率だった。