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こじらせてません
第2章 馴致
消費動向については、「女はペットを飼うのが好きなんだな」という程度に、所属欲求が満足したにすぎなかった。親と話すまで、婚期云々はこれっぽっちも考えていなかった。

そして何もミサは、「あっ、言っちゃった、ウカツ」と思った直後に、このような分析を行い、私見を下していたわけではない。

そんな時間はなかった。いま、ミサは急いでいた。

電話を切り、ホーム画面に戻ると、メッセージアプリに新規のバッジ表示があった。

慌ててアプリを開き、
送信者を確認して、
ますます慌て、
メッセージ画面を開いて文面を読む際には、さすがに歩みが緩まった。

(えっ、ウソっ……!)

地上へ出て顔を上げると、いましがた見たメッセージの通りに街路樹の下に立っていたのだから、アキラもまた、ウソはついていなかった。

「おかえりなさい」
「あ、うん……、ただいま。……どうしたの?」

急いでいた姿を見られたか、と焦り、脈拍よ止まれ止まれと願いながら問うと、

「その、一人で待ってるのも何だし……」
「あ、そう? ごめんごめん。定時で出ようと思ったんだけど、急に仕事入って」
「はい……、メッセ見ました。……でも、早く会いたかったから」

むしろ脈拍が上がったので、心筋への負担をやわらげるために髪を耳にかけた。だが今日は、会社を出る前にアップに変えていたので、鬢の毛がそよいだだけだった。

鼻を軽くすすって、鼻血が出ていないこと、および、軽く目線を泳がせて、周囲に人はいるものの、こちらを凝視している者はいないことを確認すると、

「……ありがと。いい子」

彼の頭を軽く撫でた。

街中でいきなり少年の頭を撫でる、という行為もまた、見る者しだいでは意味不明だが、自撮りとは違って、ミサは我欲に任せた。

「うん」

何が「うん」なのかわからない返事だったが、追及する気はない。
ミサのトートバッグを持ってくれたからだ。

二人で歩き始める。
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