この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
こじらせてません
第2章 馴致
「アキラくん、ごはんたべた?」
「家で食べてきました」
「そっか。よかった」

残念だった。
育ちの良い彼は、食事をする姿も優雅だ。
見たかった。

マンガではなぜか、キレイな男が食事をしている姿を見て、女が見とれるというシーンが頻出する。

「イケメン」を表現したいとき、食事のシーンが多用されると気づいた時、ミサは「そんなにも現実の男性は食べ方が汚いのかしら」と、しばらく周辺を注意深く窺ってみた。目を覆いたくなるような人は稀ではあったが、確かに、こちらが頬を赤らめてしまうほどの者はいなかった。

おそらくは滅多にいないのだろう。
滅多にいないからこそ、滅多にいないイケメン表現に用いられているのだと結論づけた。

そしてミサの家で初めてアキラと食事をした時、楚々と箸を運ぶ姿を見て、頬を赤らめるどころか、キュン死しそうになった。

確かに滅多にない、いや、不世出かもしれなかった。

「ミサさんは、ごはんは?」
「んー……」

(そっか……、ヤバいな)

「美しい食べ方」を為すアキラが見守る前で一人で食べるなんて、きっと緊張で味がしない。味がしない物を食べてカロリーを摂るなんて、拷問以外の何ものでもない。

「……まあ、家にあるもの、適当に食べるかもかな」

食べるのやら食べないのやら、そんな曖昧な返事をしたら、

「僕が作れるといいんですけど」

美しく食事をする不世出の少年な上に、料理までされて待たれた日には、ナニ死させる気だと言いたくなる。

言いたくなったあまり、これに対してはもう、曖昧な返事すらも出てこず、曖昧な仄笑み顔で歩く羽目になった。

はたと、自分では曖昧な仄笑み顔のつもりだが、ただただニヤケているのでは、と気になって、気づかれぬように徐々に修正しようとしたとき、

「あ……」

アキラに二の腕を引かれて少しよろけた。

(……っ)

突然触られて、腕のくせに、じんわりと心地よい感覚が広がる。

後ろから来た無灯火の自転車にアキラが気付き、安全にすれ違うまで、間に体を入れて守ってくれたのだった。

……。

「もっとくっついて歩きたい?」
「……はい」
「歩きたそうだったもんね」

衝動を、アキラへ転嫁した。
彼はコクリと頷いて、左手を取ってきた。
/257ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ