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こじらせてません
第2章 馴致
「手、つなぐの?」
「……え?」

アキラの右手は、ミサと指を組んでいた。「恋人つなぎ」というやつだ。

「腕、組むのかと思った」
「いや……、ですか?」
「んーん、別に」

だが、さきほど二の腕を掴んで、じんわりとさせておきながら、接触面積が実に小さいと思えてきて、

「あ、そうだ」と、ミサは左手をつないだまま、右手もアキラの方へ巡らせて袖を握った。「……こうすれば、いいんだよね?」

かなり近い。側身が触れ合っている。
そして、どう考えても、歩きづらい。

「……こうやって並ぶと、おんなじくらいか、私のほうが高いね。でも、ヒールあるからだよ? わかってる?」
「え、あ、はい……」
「デカいなー、って思った?」
「そんなふうには思ってません」

昨日はアキラに用事があったから、一日空いてしまった。寄り添うと、待望の、少年の香りがする。親指で彼の指の付け根を擦りつつ、

「じゃ、どんなふう?」
「どんなふうも、なにも……」
「だって、『そんなふうには』って言った。『には』って」

言いがかり癖は、家風かもしれない。

「……」

困らせてしまった。

「いま、何考えてるか、言って」

ミサは更に右手を引いた。
彼の腕にバストが当たっている。膨らみの柔軟度を伝えている。

「手、つなげて、とてもうれしいです」
「うん。それから?」
「その、くっつけて、うれしいです」
「うんうん、そして?」

ほら、やわらかいです、とか、揉みたいです、とか。

……。

よもや伝わっていないのだろうか。それなりの容量を有しているはずだが、主張が足りないか。

「僕が、そんなに背が高くなくても、こうしてくれて、うれしいです。大人っぽくて、キレイなミサさんと……こうしてられて」アキラの握る手が強まり、「……すごく、好きです」

カカッ──
踵を鳴らし、ミサは立ち止まった。
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