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薔薇色に変えて
第7章 突然あたえられた二人だけの時間
「え?そうだった?そっか、私も言った事なかったか・・
 大変申し遅れました、修二、成沢修二と申します」

修二さん・・口の中で呟いた私に、今度は成沢さんが聞いてきた。

「私も村山さんの下のお名前、知らないんだった。村山さんは?」

「静恵といいます」

「静恵さん・・いいお名前ですね」

「やだぁ、なによそのお見合いの席でのセリフみたいなのは!」

二人で笑い声をそろえる。
名前を知るだけのことなのに、こんなにも声をあげて笑えるなんて。
ささやかでもいいのだ。
少しでも彼のことを知れるのなら。

「オヤジたちがいないとゆっくりおしゃべりできて、たまにはいいわね」

「そんな事言って、と言いたいとこだけど、確かにのんびりできますね。
 あ、マスターには言わないでくださいよ」

成沢さんは舌を出して肩をすくめる。

「あら、小此木さんの癖がうつったみたいね」

もしかしたら将来この店のマスターになるかもしれない弟子は、
十分すぎるくらい薔薇色に染まっていた。


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