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薔薇色に変えて
第7章 突然あたえられた二人だけの時間
「そういえば・・」
仕事帰りに立ち寄った時、
ざわざわとした店内に紛れるようにして訊ねてみた。
「一人には慣れましたか?」
コーヒー豆を挽く手をふと止めた成沢さんは少し考えるような眼差しを宙にむけ、
でもすぐに緩やかな口元に笑みをたたえた。
合わせた目が、優しく歪んだ。
「変なこと聞いてごめんなさいね。急に・・天ぷら屋でのこと、思い出しちゃって」
初めて2人で食事をした時の私への質問。
独りにいずれは慣れられるのだろうかと淋しさと不安を入り混じらせていた。
あれから半年以上が経ったが、それでも人生の中では微々たる時間だ。
そんなに簡単に答えは出ない事はわかる。
でも聞いてみたかった。
彼はこの先どう生きていこうとしているのかを、知りたいと思ったからだ。
コーヒーを淹れ終えるまで、彼は何も語らなかった。