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薔薇色に変えて
第8章 想いのままに
「ゆっくりでいいです、私に気持ちを向けること・・
 少しづつでも進んでいこうって思ってくれているだけで私は幸せです・・
 いまさらあせってもしょうがないじゃない?」

これまでの人生の時間よりも確実に少ないこれからの時間。
それはわかっているのだから、焦って無理矢理濃くするよりも
じわじわと染み出るくらいが心は楽だ。

「そうですね・・焦るとロクなことが無い。慌てるから失敗をしたりする。
 今みたいにね。
 ゆっくりになるかもしれません。案外早いかもしれません。
 どちらにしてもあなたに真正面から向き合って、
 それから並んで歩いていきたいと思っています・・」

私は、しっかりと顔をあげてこれから向き合う男の顔を見つめた。

「そうだ、村山さん食事は?
 よかったら僕の作ったナポリタンを試食してもらえるかな?
 待っている間に練習してみたんだけど」

急にきびきびと動きだし、満面の笑みでそう言われたら、
食事は済ませた、とは言えなくなってしまった。

「じゃあ是非。でもあんまり上手に作られちゃうと私の立場が無くなっちゃうわね」

嬉しそうに玉ねぎを刻む。
目に沁みるねと目のふちを拭う成沢さん。
もしかしたら涙を誤魔化したかったのかもしれないなどと勘繰りながら、
フライパンの中に入れられた具材のはじけるような音に
目じりを下げた。



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