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薔薇色に変えて
第8章 想いのままに


ナポリタンを食べながら、まずは若い頃にはした事の無い
ケータイ番号とメールアドレスの交換をした。
20代の頃はまだ携帯電話はなかった。
30を超えてから世の中に侵透しだしてきた便利な代物。

ちょうどそのころから男と縁が無くなってしまった私には
経験の無い事だった。


バッグから取り出したガラケーを見て、成沢さんはよかった、と
あからさまにホッとしてみせた。

「村山さんもガラケーですか、僕もです。
 今どきはみんなスマホで、マスターでさえ使いこなしているのに
 僕などかえって面倒くさいんじゃないかって敬遠していたんです」

「私も同じよ。操作覚えるのが面倒そうだし、どうせたいして使わないだろうしってね。
 似たもの同士でよかったわ」

さっそく互いの携帯を覗き込みながら番号やアドレスを登録する。
自然と寄り添うことに躊躇いを感じることもなく、たどたどしくキーを打つ。
時折あげる甲高い声に笑いを混じらせて、ようやく互いのアドレス帳を完成させる。

終わった後で、赤外線通信という便利な機能があったことを思いだし、
苦戦した時間を笑い飛ばした。



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