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薔薇色に変えて
第1章 喫茶・薔薇色
この会社には、40の時に入った。
母も亡くなって、介護中はパートでもよかったが、
この先一人かもしれないと考えた時にはパートでは心もとなかった。
40という年齢ではかなり不利だとわかっていたが、
それでもわずかな可能性にかけて何社もまわった。
面接の連打をして6社目か7社目だったか。
今の会社、「伊勢佐木シルク商会」に拾われた。
社長の山中は面接の時、私の話を聞いて他人事じゃないと深く息をつき、
私の苦労を理解してくれた。
だがそれだけで採用してくれたわけではないらしい。
経理ができて細かな作業も苦にならない、というアピールポイントの他に
決め手となったのは、そこそこ年齢がいっている事、らしい。
「うちみたいな小さくて地味な会社には若い子は来ないからね。
たまに来たりするけど、すぐ辞めちゃって。
メンバーもおじさんばかりだから、つまらないんじゃないの」
社長はため息交じりに笑っていた。
私は、おばさんの部類に入るのだろうが、そんなことはどうでもいい。
社員で雇ってくれて、食べていけるだけの給料をもらえて、
そしてできれば定年まで働かせてもらえる会社ならどこでもよかったので、
やってみますか?との言葉に即座に返答した。
やらせてください、と。