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薔薇色に変えて
第2章 寂しそうな客

「なんだか・・寂しそうな人でしたね」
男が店を出て、カウベルの音の余韻も消えてから私はかすかなため息とともに呟いた。
「うん、入ってきた時からね、なんかこう、疲れ切ってるっていうか、
誰とも話したくないけど誰かの近くにいたいって、そんな感じだったなぁ。
きっと人生で何か辛い事があったんじゃないかな、あの影は」
小此木さんは男が座っていたテーブル席を見つめた。
ポツンと置かれたコーヒーカップ。
片づけにでようとした小此木さんを制して、
私は布きんを手にコーヒーカップを片付けに立ち上がる。
テーブルを拭き、カップをカウンターに置きながら、
もう一度テーブル席を振り返った。
背中を丸めたシルエットが、
残像のように瞼の奥に残っていた。

