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薔薇色に変えて
第2章 寂しそうな客
「あれ、村山さん、どうしたの?なんか鬼の形相になっちゃってるけど。
 それにまだ仕事中じゃあ・・あ、あれ?あなた・・」

丸い眼のまんま、小此木さんは立ち上がって声をあげたが、
私の後ろからそろりと入ってきた男を見て、語尾が詰まった。


小此木さんはすぐに思い出したらしい。
声を詰まらせたのは一瞬で、すぐに皺だらけの温かい笑みを男に向けて、
2つのグラスに水を注ぎ始めた。

「いらっしゃい。うちの宣伝部長につかまったんですか?あなた。それにしても・・
 こんなおっかない顔した女性と一緒じゃさぞかし怖かったんじゃないですか?」

いつもの窓際の席に座った私と男に、満面の笑みで水を出してくれる。
小此木さんの余計な一言に引っかかる間もなく、私は小此木さんに捲くし立てた。

「聞いてください!こちら・・戸部駅のホームから飛び込もうとしてたんです!
 私、高城屋デパートから別の取引先に行って、それで戸部から電車に乗ろうとしたら
 ホームで見かけて。近づこうとしたらホームの端のほうによろよろと・・
 もうすごい勢いで怒鳴りつけちゃいましたよ」

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