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薔薇色に変えて
第2章 寂しそうな客
その値段も香りも高いコーヒーをカリカリとミルで挽きながらも、
小此木さんは私を呆れ顔で見ている。
その視線が痛くて痛くて、ほっぺたに針金が差し込まれたような気分になって、
私はひたすら目の前の男に頭を下げた。

「ごめんなさい・・本当に申し訳ない・・
 少数だったとはいえ人前で恥をかかせてしまって・・
 本当にごめんなさい。でも・・そう勘違いしたのは
 あなたのせいでもあるんですよ」

散々謝っておきながら終いにはあなたの責任もある、なんて、
よくもそんな事が言えたものだ。
男に向けていた眼差しの隅っこに、小此木さんが口を開けている顔が入ってきた。

「え?私の・・せい?ですか」

「そうですよ。だって・・2ヶ月ほど前でしたっけ?この店にあなたがいらしたのは。
 その時、ものすごく寂しそうな、辛そうな背中を見せてここに座って。
 何かあったと思わせるような雰囲気でしたから。もちろん、悪い意味のね。
 ホームでお見かけした時はすぐにあの時の人だって気づきました。
 寂しそうなあの人だって。そんな印象を思い浮かべている時に
 ホームの端にむかってフラフラッと行ったら誰だって勘違いしますよ」

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