この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
薔薇色に変えて
第2章 寂しそうな客

声を詰まらせた男は慌ただしくカップを口に運ぶ。
コーヒーを飲んで、涙を誤魔化そうとしている事に私は気づいてしまった。
胸が苦しくなった。
家族を亡くす、という経験は私もしているが、
血のつながった親兄弟とは違う悲しみなんじゃないかと思う。
生涯の伴侶、というのは人生の中で偶然に出会い引き合う。
見ず知らずの男と女が運命に導かれて新たな家族となるのだから、
そのめぐり合わせの中でパートナーになれた相手に対してはやはり
特別な思い入れがあるはずだ。
男を見ていて、私はそうとしか思えなかった。
ようやく気持ちが落ち着いたのか、照れたような口元を見せてから、
男は続きを語りだした。
「初七日も終わって、仕事にも戻らなければいけないと頭ではわかっていたんですが、
心だけじゃなく体も動かなくなってしまったんです。
周りは無理せずゆっくりと戻ればいいじゃないかと言ってくれたんですけどね。
とにかく何もする気がおきない。食事もする気になれないし、
会社にもとにかく行かなきゃと行ってはみても、なにも頭に入ってこない。
だから仕事も滞って・・周りは迷惑してたんじゃないでしょうか。
とうとう私のことをうつ病じゃないかなんて言う人もいて・・」
コーヒーを飲んで、涙を誤魔化そうとしている事に私は気づいてしまった。
胸が苦しくなった。
家族を亡くす、という経験は私もしているが、
血のつながった親兄弟とは違う悲しみなんじゃないかと思う。
生涯の伴侶、というのは人生の中で偶然に出会い引き合う。
見ず知らずの男と女が運命に導かれて新たな家族となるのだから、
そのめぐり合わせの中でパートナーになれた相手に対してはやはり
特別な思い入れがあるはずだ。
男を見ていて、私はそうとしか思えなかった。
ようやく気持ちが落ち着いたのか、照れたような口元を見せてから、
男は続きを語りだした。
「初七日も終わって、仕事にも戻らなければいけないと頭ではわかっていたんですが、
心だけじゃなく体も動かなくなってしまったんです。
周りは無理せずゆっくりと戻ればいいじゃないかと言ってくれたんですけどね。
とにかく何もする気がおきない。食事もする気になれないし、
会社にもとにかく行かなきゃと行ってはみても、なにも頭に入ってこない。
だから仕事も滞って・・周りは迷惑してたんじゃないでしょうか。
とうとう私のことをうつ病じゃないかなんて言う人もいて・・」

