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薔薇色に変えて
第2章 寂しそうな客
「まあ、酷い・・」

私は、自分のことを思いだしていた。
父の介護のために職場に迷惑をかけているのは重々わかっていたが、
理解してくれているものだと勘違いをして。
本音は迷惑なんだと言いたげな憐みの表情に囲まれて、小さくなっていた。
あの時の自分と少し似ているのかもしれない。
少し、そう、少し。
だって、その時私の父はまだ生きていたのだから。

「結局、会社を辞めてしまいました。
 それから2ヶ月、気が向いたら外に出て、妻との思い出の場所に行ってみたり、
 2人で出かけたところではないけど妻が話して聞かせてくれたお気に入りの場所なんかを
 歩いてみたりしてたんです。ここも・・多分そうなんです。
 以前妻から、横浜に素敵な喫茶店があったって、聞いた事があって。
 細かい住所までは知らなかったのですが、確か名前が薔薇色、とか言っていたのだけは
 覚えていて」

あてはほとんどなかったが、歩いていたら偶然それらしき喫茶店を見つけたので、
2ヶ月ほど前のあの日、この店に入ってみたのだと男は言った。

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