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薔薇色に変えて
第2章 寂しそうな客
「お宅はどちらに?」
小此木さんが尋ねた。
「横須賀です。京急線沿いで。なので妻の言う横浜という場所も
きっと京急線の駅のどこかじゃないかと。
実際は少しずれていましたね」
男と再会した駅の次の駅、日ノ出町からJR線の関内駅までの間にある、
この喫茶・薔薇色。
彼の奥さんはきっと、ぶらぶらと街歩きをしている最中にここを見つけたのだろう。
そして彼をこの場所に導いてくれたのは、奥さんの魂なのかもしれない。
男はコーヒーを飲み干した。
「ああ、おいしかった。マスターの淹れるコーヒーは本当においしい・・」
カラになったカップをいとおしそうに両手で包む。
名残惜しそうに少しの間、カップの中を覗き込むようにして眺めていた。
その様子に小此木さんは満足そうな笑みを浮かべた。
「話し相手が欲しくなったらまたここへいらっしゃい。
僕も連れ合いを亡くしていて、いわばあなたの先輩ですからね。
それになんといってもほれ、これだけ歳を取っているんですから、
多少なりともお役に立てるかもしれないですからね」
小此木さんが尋ねた。
「横須賀です。京急線沿いで。なので妻の言う横浜という場所も
きっと京急線の駅のどこかじゃないかと。
実際は少しずれていましたね」
男と再会した駅の次の駅、日ノ出町からJR線の関内駅までの間にある、
この喫茶・薔薇色。
彼の奥さんはきっと、ぶらぶらと街歩きをしている最中にここを見つけたのだろう。
そして彼をこの場所に導いてくれたのは、奥さんの魂なのかもしれない。
男はコーヒーを飲み干した。
「ああ、おいしかった。マスターの淹れるコーヒーは本当においしい・・」
カラになったカップをいとおしそうに両手で包む。
名残惜しそうに少しの間、カップの中を覗き込むようにして眺めていた。
その様子に小此木さんは満足そうな笑みを浮かべた。
「話し相手が欲しくなったらまたここへいらっしゃい。
僕も連れ合いを亡くしていて、いわばあなたの先輩ですからね。
それになんといってもほれ、これだけ歳を取っているんですから、
多少なりともお役に立てるかもしれないですからね」