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薔薇色に変えて
第3章 再会に添えられた喜び

だが帰りになって、なぜだか急に喫茶・薔薇色に行きたくなった。

当初の計画では、関内のスペイン料理の店に行くつもりだった。
でも何か心の中のT字路で、薔薇色のほうへ曲がれと指令が出たのだ。


会社を出ると、そのまま喫茶・薔薇色を目指した。
重厚な木の扉を開けると、カウベルの音がなぜかいつもより華やかに聞こえた。

「こんばんは。美味しいディナーを食べに来ましたよ」

おどけた声を出した私に、お疲れさまと2人分の声がかけられた。
二重奏のように重なった声。
その声のほうに顔を向けると、小此木さんと、
そしてあの成沢という男が私に笑顔を向けていた。

「噂をすれば影、だね。いらっしゃい。今村山さんの話をしてたところなんだよ」

皺を増やした小此木さんの顔を見上げるように、成沢さんが顔をあげる。
それから私にむかって軽く頭を下げた。

これか・・こういうことか・・
私が薔薇色に向きを変えたのは、こういう縁に引き寄せられたんだ、きっと・・

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