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薔薇色に変えて
第4章 金曜日の常連
「お疲れ様でした」
カウベルの奏でる音の後、私よりも先に成沢さんが声をかけてくれた。
「こんばんは、いらしてたんですね」
成沢さんがここに来ている事は、小此木さんから無理矢理教えられていて
わかってはいるが、素知らぬ顔で偶然を装った。
「なんだかここへ来るのが生活の一部のようになって。
ここ半年は誰とも向き合わずに時間だけを過ごしてきましたからね。
こうしておしゃべりできることが嬉しくて」
少し息を弾ませる成沢さんの顔は生き生きとした表情で、
初めてこの店で会った時のあの寂しそうな影はすっかりなくなっている。
他人を避けるようにして過ごしてきた時間を取り戻したいのかも・・しれない。