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薔薇色に変えて
第4章 金曜日の常連
「村山さんはどんなお仕事されてるんですか?」
キリマンジャロの香りを確かめるようにしてから、成沢さんはカップに口をつけた。
「あら、もう知ってるんだと思ってました。てっきりマスターがしゃべってるかと」
意外にも成沢さんは私の職業を知らなかった。
とっくに小此木さんが情報提供しているものだと思っていたのに。
「私の勤めている会社はシルク製品の、いわば問屋です。
そこで経理と商品の出荷作業と雑用と。
営業以外のことは全部。あ、たまに営業もやらされたりしますけどね」
商品はブラウスや下着やスカーフだと言うと、おしゃれな仕事ですねと
成沢さんは笑顔を作った。
その後今度は神妙な面持ちをみせた。
「ご両親の介護を・・お一人でされていたそうですね」
・・えっ!そこはしゃべってるんだ、いやねぇ、余計な事を・・
答えを返す前にさりげなく後ろを振り返り、眼の合った小此木さんを軽くにらんだ。
お決まりの、舌を出すポーズで逃げていた。