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第4章 金曜日の常連

そうですか、と消え入りそうな声で相槌を打ったきり、成沢さんは口をつぐんだ。

私は想像した。
きっと彼は、返すにふさわしい言葉が見つけられないでいるのではないか。
安っぽい賛辞や慰めの言葉など、かけたところで私が喜ばない事を
ちゃんとわかっている。
だからこそ、返す言葉が無いのだ。


次第に、その神妙さが可笑しくなってきた。
真面目な時ほど笑いたくなる。
お坊さんのお経や神父さんの誓いの言葉。
周りがシンと静まりかえっている中で一人だけ肩を震わせる奴がいる。
まさに今の私がその、ヤツだ。

小さな笑い声をもらす私を、成沢さんはハッとした顔で見つめている。
目があった瞬間、私は声をあげて笑ってしまった。

成沢さんも、そしてわざわざカウンターから出てきて私の顔を覗き込む小此木さんも、
不思議なものでも見るかのように口をポカンとさせていた。

「だって、そんなに気の毒そうな顔されるとかえっておかしくなって。
　一人だって慣れれば結構快適なんですから」